『SS』 金銀・パール・ダイアモンド&パールプレゼント

 長い事SOS団なる学校非公認の怪しげな団体に所属すると団長がお望み通りの不思議な事件というものに遭遇する機会というものは多々あるものである。
 その原因は主に団長閣下の世迷言であるのだが、それを解決するための手段が宇宙人の特殊能力だったり超能力者たちの恐ろしいまでの組織力だったり未来人と時を駆けてみたりと方法論としては強引に過ぎるものであったりするから俺の心労は癒える事も無く、ただ状況に流されるままに悪戦苦闘した挙句に何の見返りも期待できずに溜息だけを量産していく事となるのだった。
 今回の話もその大量生産された溜息の中に閉じ込められた一つの物語であり、解決したとはいえ間違いなく俺の幸せは溜息と共に逃走していったのだった。そんな話である。

 



 きっかけは妹が大事そうに小さなガラスケースを抱えて帰ってきた事にある。珍しく帰宅が遅かったので心配した家族が俺を捜索隊に任命しようとした矢先だったので助かったと思いながらも連絡もないことへ妹を叱責しようとしたのだが、困り顔で俺を見つめてきたので何も言えなくなってしまった。先に言っておくが俺は妹に甘くは無い、はずだ。
「どうしたんだ? 遅くなるようなら家に連絡しないとダメじゃないか」
「うん、ごめんなさい。でも……」
 謝りながらも視線はケースに釘付けだ。何が入っているのかと見てみれば、
「何だ、こいつ?」
 ケースには水が張られており、その中で魚が一匹泳いでいる。長い魚体と伸びた髭、とくればもうお馴染みであろう。 
「ドジョウじゃないか、どうしたんだこんなの?」
 水槽の底面をにょろにょろと泳ぐドジョウを見ても何故妹がこんなものを持って帰ったのか理解が出来ん。
「理科の授業で観察したの、それでくれるっていうから貰っちゃった」
 いや、貰っちゃったって。何でもあげるからって言われてもらうもんじゃありません。なによりドジョウの観察ってえらく地味な授業だよな。
「水槽を綺麗にしてくれるんだよー」
 なるほど、ドジョウは水底の苔などを食べるらしいと聞いたが恐らく何か他の魚と一緒に飼っていて余った分を押し付けられたと見た。つまりは妹は人の良さを教師に付け込まれたんじゃないのか? 皆が断わっただろうに、こいつは嬉々として受け取ったに違いない。
 我が妹ながら、その素直さに将来を心配になろうというものだが、それよりも今はこのケースの中で泳ぐ哀れなる魚の心配をする方が先だろう。とりあえず水槽なんかあっただろうか、妹にリビングにケースを持っていくように命じて俺は物置を探す事にした。
 だが、俺の捜索は半ばで中断する事となる。押入れの中を漁っているとリビングから甲高い悲鳴が聞こえたからである。声は妹だ、何があったんだ?!
 散らかした荷物もそのままにリビングに駆け込んだ俺が見たものは。
「もー! ダメだってシャミー!!」
 妹に抱きかかえられたまま四肢をばたつかせて暴れる我が家の駄猫であった。普段は呼吸しているのかどうかとすら思えるほど動こうともしないシャミセンが目を光らせて暴れている姿など奇跡の範疇に入るんじゃないか? 何があったのかと暴れるシャミセンの視線を追えば、おのずと原因が分かってしまったのだが。
「はあ、一応お前も猫なんだなあ」
 その先にはガラスケースが鎮座しており、ケースの中ではシャミセンの狙うターゲットが自覚も無く泳いでいる。どうやら眠りっぱなしだった狩猟本能が動いている魚を見たことにより目覚めてしまったらしい。
キョンくん、どーにかしてよー」
 どうにかって言われても。とりあえずは妹にはシャミセンを動けないように固定させながら、俺はドジョウを避難させる。とはいえ避難場所なんてある訳ないので自分の部屋までケースを持って行っただけなのだが。
 何で俺の部屋にドジョウを持って行かなきゃならないんだ、と今更思っても遅いのだろうがシャミセンが気になったので階下へと戻ってみると、妹がシャミセンの腹を撫でていた。どうやら嵐は去っていったようだな。
「ありがとキョンくん! ドジョウさん、お願いね?」
 いや、お願いって。お前がどうにかしろよ、と言ってはみたが既に興味はシャミの腹へと移ってしまった妹には聞く耳が無かったようで。仕方ないからシャミセンを俺の部屋に入れるなよ、と注意だけ入れて俺は部屋へと戻った。ガラスケースの中のドジョウは何も無かったかのような優雅さである。
「ったく、どうしろってんだ……」
 このまま置いておいてもシャミセンの的にしかならないのも明白だし、かといって終日部屋を閉めておくというのも出来そうにないだろう。普通に俺が出入りする隙を縫うくらいはあの猫でも出来るんだぞ?
 それにドジョウを飼うような環境に我が家が無いのもまた事実だ、水槽はあるかもしれないが餌も含めて用意するのはなかなか大変だと思う。
 さて、どうしたもんかね? こんな事で一々頭を悩ませるのもアホらしいのだが、相手が生き物なだけに無碍にも出来ないだろうしな。さしあたっての避難先だけでも確保せねばならないだろう、と思ったらある考えが浮かんでしまった。安易だけどまあいいんじゃないか? 少なくともウチにいるよりはマシかもしれん、もしかしたら寿命を縮めてしまうかもしれないが。
 とにかく今晩はうるさいシャミセンも居ないのは確定だし、ゆっくり眠らせてもらうとしよう。明日になればまた面倒な事になるのは間違い無いのだから。





 珍しい事に朝になっても妹が部屋に入ってくる事は無かった。別に俺が早起きをしたって訳では無い、むしろギリギリまで寝てしまった。だが妹が入ってこなかった理由は分かっている、それは朝食を食べる為に台所へ行けば誰でもそうかと思うだろう。
「おはよーキョンくん、ドジョウさんは大丈夫?」
 ああ、大丈夫だ。だからもうシャミセンを離してやれ、それじゃ普通の餌も食えないだろ。本当に大丈夫? と何度も言われながらも、ようやく開放されたシャミセンが餌入れへと走るのを見ながら妹はまさか一晩中シャミセンを抱いていたのかと心配になる。妹が、じゃないシャミセンが可哀想だろ。たかがドジョウにというとアレだが、やはり気の毒だな。
 という事なので早めにシャミセンを助けてやろう、俺は朝飯を食べ終わると妹にもう少しだけシャミセンを抑えておくように命令した。すまんシャミセン、後少しの辛抱だ。俺は部屋に戻るとガラスケースとカバンを持って階下に下りた。
「あれ? ドジョウさんをどうするの?」
 シャミセンを抱きしめたままの妹に学校に持っていくと言うと、
「え〜? あたしも行く〜!」
 などと言い出したので、
「ここだとシャミセンにもドジョウにも精神衛生上よろしくないだろ? 大丈夫だ、責任持って可愛がってくれる奴を探すから今度そいつに見せてもらうように頼んでやるよ」
 何とか説得して俺は玄関へと歩くのだった。まあ二〜三日もすれば忘れるかもしれんし、忘れなかったら見せに連れていくしかないだろうな。
 ママチャリの前カゴにケースを入れて、揺らさないように気を付けながら自転車を走らせる。いつもよりも少しだけ時間をかけて重いケースを持ったまま坂を登るという責め苦を味わいながらも俺はどうにか北校まで遅刻もせずに登校に成功した。だが、このまま教室に直行出来る訳では無い。若干周囲の目が気になったがSOS団の異名はこのような時に発揮されるとみえ、誰にも何も言われないままにケースを持った俺は無事に目的地であるところの文芸部室まで辿りついてしまったのであった。
 さて、朝なので当然朝比奈さんの着替えなどある訳もないのだからノックもせずに入る。誰も居ないと思うだろ? ところがこの部屋には何時でも何故かいる奴が一人いるんだな。そしてそいつは当たり前のように窓際で読書をしていた。これで無遅刻なのだから羨んでいいのかどうか。
「すまん長門、ちょっと頼みがあるんだが」
 俺がここに居る事にもまったく疑問を持っていなさそうな無表情の部屋の主にガラスケースを見せながら、
「ちょっとこいつを置かせてもらってていいか? 出来れば飼育方法まで解ると助かる」
 日当たりの良さそうな長門の前に机を動かしてケースを置く。すると今まで本から顔を上げる事の無かった長門がケースを見て一言、
「なに?」
 と尋ねてきた。長門なら見なくても分かりそうなもんだが生きているドジョウなどは見たこともないだろうな。
「ドジョウだ。妹が昨日持って帰ったのはいいんだが家には生憎こういうのを好きな猫という生物がいるんでな、緊急措置としてここに避難してきたって訳さ」
 俺の説明を聞いた長門は、そう、と一言呟くと再び本へと視線を落とした。いや、もうすぐ始業のチャイムが鳴るんだけど。まあ長門なら大丈夫だろう、それよりも俺の方こそここからダッシュでギリギリだ。
 頼んだぞ、と一応念を押して俺は急ぎ教室へと赴くのだった。長門の事だ、万事上手くやってくれるさ。
 そして岡部が入ってくる直前に教室に滑り込んだ俺が不機嫌なハルヒの嫌味に耐えて授業を送ったことは言うまでもない。いいじゃねえか、遅刻じゃなかったんだから。
「そんなだからあんたは間抜けなのよ! いい? 大丈夫だろう、なんて甘い考えは今すぐに捨てなさい! 常に臨戦態勢、何事があっても動じない心、これがSOS団の団員たる者の基本理念なんだからね!」
 アホか、そんなに気を張ったまま過ごせるもんかよ。それでなくても今日は必要以上の労働を強いられたんだ、文句があるなら妹にでも言ってくれ。それでも不満たらたらの団長閣下は午前中ずっと俺の背中にシャーペンで地味なダメージを与え続けてくれやがったのである。せめて大人しくしておいてくれないか? 
 




 などと精神的にも肉体的にも休まる事も無く、おまけに授業内容も頭に入らないままに時刻は昼を迎えて地味な攻撃はようやく中断されたのだった。理由は簡単、チャイムと同時に加害者が飛び出していったからである。あいつが飯を食いに行ってくれるこの時間だけが安らぎの時だなんて何て学校生活なんだ。
 それでも貴重な時間である事は間違いが無い。いつも通り国木田と谷口と席を並べて弁当を食い、ようやく落ち着いたところで今日はいつもと違う事をすっかり失念していた。そう、教室の入り口に見慣れたショートカットの小柄な文芸部員が立っていたのだから。
「どうしたんだ長門? 珍しいじゃないか昼休みに来るなんて。ハルヒならまだ戻って来てないぞ、それとお前昼飯は食ったのか?」
 いつまでも入り口に立たれてはハルヒにどんな風に伝わるか分かりはしない。俺は長門の肩を押すようにしてとりあえず教室から離れた。ハルヒを探すのを手伝う、そう見せかけられたのならいいんだが。
 ある程度クラスから離れたところで大人しく俺に従ってくれた長門に改めて来訪の目的を問い質す。長門はいつものように簡潔に、
「預かっている、コイ目ドジョウ科に分類される淡水魚の処置について尋ねたい」
 どうした? 確かに俺も長門も授業があるから目を離していたがそんなに急には何かあるとも思えないぞ?
「あの魚は昨日から食事を摂取していない。今はまだ健康面に異常は見受けられないが時間の問題、早急に対策が必要と判断する」
 そうだった、昨日はシャミセンの騒ぎでドジョウの餌まで気が回らなかったが妹の小学校で何か食わせていなければ丸一日何も食べていないことになる。そんなに気にすることでもないのかもしれないが預かった手前、放っておくのも後味が悪い。
「それは分かった、だがドジョウの餌なんて持ってないぞ?」
「対処法はある。ただしあなたの協力が必要、許可を」
 許可も何もドジョウの餌を手に入れるためには俺に手伝えってことだろう? 俺が持ってきた奴なんだ、手伝わせてもらうさ。
「では、早急に。こっち」
 長門に促されるままに歩かされて気付けば外に出ていた俺は、いつの間にか長門が用意していたスコップを持って体育館の裏側で土を掘っていた。何故かって? ドジョウの為だよ、コンチクショウ。
「そっちも」
 はいはい、分かりましたよ。ったく、俺は田舎で何度も見たりしてるからいいが都会っこには厳しい注文だと思うぞ。
 と、いうことでビニール袋にうじゃうじゃと蠢く虫だとかミミズ(朝比奈さんが見たら卒倒しそうだな)を持って部室に戻り、動かなくなったドジョウの入ったケースに放り込もうとしたのだが。
「そのままでは淡水魚は十分な摂取は不可能」
 という長門の言葉にどうすればいいんだよ、と返そうとしたら例の高速の呪文のような詠唱が聞こえてしまい、ビニールの中身は蠢く事は無くなった。いや、正確に言はねば言わねばなるまい。粉のような物になっていた。どういう仕組みだかは解らんが、ドジョウには食べやすくなったらしい。
「急速乾燥させてから粉末状に加工した。後は底面に撒く事によりスムーズな栄養補給が可能」
 至れり尽くせりである。ここまでして頂けるほどの大物だったのか、このドジョウ。感動に近い感情で粉を撒いたらドジョウはゆっくりと水を吸い込むようにして餌を食べていた。
 とりあえずはこれで一安心といったところであろう、どうするかという問題は残ったままなのだが。
「問題ない。水は交換済み、栄養補給を終えた時点で死亡の確率はない」
 そっちじゃねえよ。と言っても後はまた長門に世話を頼むしかないのだが。何故かこいつ親身になってるし。
「あなたからの依頼。わたしは全能力を持って期待に応える準備がある」
 そんなに重いもんじゃないって。だが俺からの頼みをそこまで重要に考えてくれるのは嬉しいもんだ、なので放課後までの管理もお願いしてから安心して教室に戻った。
「………どこ行ってたの?」
 安心出来なかった。何だその会社は定時に出たはずなのに連絡も無く午前様で帰ってきた亭主に向かって疑いの眼差しを隠そうともしない古女房のようなセリフは。
「え、えーと、ちょっとトイレに」
 そして何だ、その後ろめたい事は何もないですよー、っていう態度が既に怪しいんだと分かっていながら誤魔化そうとする恐妻家のような俺のセリフは。
「ふ〜ん………もう少し行動には余裕を持ちなさい」
「しょうがないだろ、生理現象だ」
 会話終了。後は二人で机に伏せる。見事なるシンクロ、まるっきり倦怠期の夫婦である。誰が夫婦だ。
 セルフツッコミも終えたところで放課後の為に休息を取ろう、本末転倒という四字熟語の意味は今は考えたくないんだ。





 気付けば放課後だった。正しく言えば目を覚ますと放課後だった。より詳しく言えばまどろむ俺の首根っこを掴んで引き倒した女に、
「行くわよ!」
 と耳元で叫ばれてネクタイで引きずり回されそうになったのを辛うじて抑えながら犬のように引っ張られている放課後だった。何故こいつは起きぬけから元気なのだ。
 今更ながらエンジンの出力に違いがあることを実感しながら通いなれた廊下(本日往復三度目になる)を歩いて旧校舎まで。部室までノンストップで駆け抜けたハルヒは俺を引っ張ったまま、
「やっほーっ! みんないるわね?!」
 いや、朝比奈さんが着替えてたらどうすんだ! という俺のツッコミももういつもの事過ぎる。そしてハルヒが俺を引っ張ってノックせずに部室に入ったときは、
「あ、涼宮さんこんにちは〜」
 既にメイド服に着替えておられるんだよな。安心していいのか常にそうあって欲しいのか。いや、俺が一人でノックもないなんてあっちゃいけない。その時に限って、なんて考えてもいけないのだ。
「エロキョンは放っておいて、みくるちゃん、お茶!」
 何故心がこんなにも読まれるのだろう。というかエロ確定って。理不尽なハルヒに抗議したいのに何も言えないのは決して後ろめたいからではない。だからそんなに恐る恐るお茶を持ってこないで朝比奈さん!
 とは言いながらも朝比奈さんの心づくしのお茶を飲もうとした時だった。
「あれ? あれ何かしら?」
 というハルヒの声の先には例のガラスケースがあり、その真横で長門は読書中だった。ああ、忘れてた。
「あれはドジョウだ」
「は? 何で?」
 名詞をつけて話せ、それに何でと言われても。
「妹が学校から持って来ちまったけど家にはシャミセンが居て飼えないから緊急避難として連れて来たんだよ」
 おかげで必要以上に動き回らなければならなくなってしんどいのだけどな。そう思うと急に肩が痛くなってきたような。肩を回すとコキコキと音がする感じだ。
「それはお疲れ様です、言ってもらえればお迎えに行きましたのに」
 古泉のセリフに車でも用意してもらえれば良かったと今更ながら思う。いつも『機関』には苦労させられてるのだ、このくらいは許されていただろうに。
「いや、自転車に積める範疇だったからそこまでしてもらわなくていい。それよりこいつをどうするか考えてくれないか?」
 結局『機関』の連中に借りを作るような行為は謹んでおこうと思いながらも古泉ならドジョウの引き取り手(結局『機関』だが)くらいは心当たりがあるだろうと振ってみる。
「そうですね……」
 古泉が顎に手を当てて考え出したのを尻目に、
「うわ〜、ドジョウさんって初めて見ました〜」
 と呑気に騒いでいるのは朝比奈さんである。未来にはドジョウはいないのだろうか? 環境がどうなっているのか、まさか地上は生命体が住める環境ではなくなって皆地下に住んでいるとか。無いな、それでもドジョウくらいはいるだろうし。単に朝比奈さんが見たことがないだけだろう、せいぜい図鑑やテレビの中でしか。
 俺などは最近の年代ではまだこのような生き物を見ているほうなのかもしれない、田舎に毎年帰っているので自然に触れ合う機会は多い方だろう。
「学校の授業で使ったのですか、なかなか情操教育としては良いのではないでしょうか。最近の教育ではこのような授業を出来る時間が取れないと聞きますからね」
 そういうものかもしれないが最後に生徒に押し付けるのはいかがなものか。仕方ないですよ、とまるで教師のように肩をすくめる古泉。そうだな、責任ばかり取らされるのは教師も『機関』も同じ様なもんか。
 ドジョウもハルヒも大変だな、と本人に聞かれたら何をされるか分かったもんじゃない感想を抱きつつもドジョウと同じ扱いをされた本人はドジョウを一心に眺めている。そんなに珍しいか? 
「ねえキョン、この子に餌とかあげた?」
 この子ってドジョウか? 餌ならやってるぞ、長門のおかげだが。俺の返事にもガラスケースから目を離さないハルヒは、ふ〜んとだけ呟くとそのままドジョウ観察に終始している模様だった。何となく妹もこうだったんじゃないかと思えてくるな、夢中になると離れそうも無い。
 ほとんど動こうともしないドジョウを夢中で見つめるハルヒと朝比奈さんは置いておいて俺は古泉といつものゲームに興じる事にする。
「いやいや、おかげで涼宮さんの精神状態は落ち着いています。たまのサプライズとしては適度な刺激でよいのではないでしょうか」
 そんなもんかね。とにかくハルヒと朝比奈さんはドジョウに構いっきりだし長門ですらチラチラと本から顔を上げてケースに目をやっているんだから大人気だな。
 しかしまあ女性陣が揃ってドジョウを観察しているというのも、ほのぼのとしていいものだな。のんびりとした時間が流れていき、俺も久々にゆっくりとしていた。ちなみにゆっくりしようが古泉は連敗記録を重ねていたが。