『SS』 願い事:Dialogue

「ちょっと! あんた今年も同じ様なのしか書けないわけ? って、まったく同じな願い事書いてるじゃないの!」
「しょうがないだろ、俺の願い事なんてこんなもんだ。それに、十年も二十年も後にしか叶わない願いならこのくらいでいいだろ」
「あーもうっ! 分かってないわね! 将来叶うかもしれないからこそ大きな願いにしなきゃ損じゃない! それに、この願いは根本的に間違ってるのよ!」
「どういうことだ? 庭付きの一戸建てなんて男がまず最初に夢見るもんだろ。それに十年そこらで叶うなら頑張ってる方だと思うぞ」
「そこが間違ってるのよ! あんた長男でしょ? 今住んでる家はどうするのよ」
「ああ、そうだった。という事は、俺は長男としてあの家も管理する義務が生じるという訳だな」
「そうよ! あんたが就職先を上京して探すって場合でも、最終的にはこっちに戻ってくるか、向こうにご両親を呼ぶかしないといけない訳なのよ。そこんとこはどう考えてるの?」
「ううむ、まだまだ先だと思っていたが。しかし、出来れば両親には故郷で暮らしてもらいたいと思っている。それに、正直就職先も地元の方が便利でいいと考えているからな。そうなると今の家は手放せないってことになるか」
「大学は別のところでもユーターン就職を考えてるのね。ちゃんとご両親の事を考えてるのは感心だけど、余計に庭付き一戸建てなんて言ってる場合じゃないわね」
「そうだな。よし、願い事はリフォームにしておこう」
「そうね。あんたのとこが築何年なのか知らないけど、少なくとも妹ちゃんが生まれた時にはあの家だったとすれば、築二十年以上は経過している事になるわ。もうリフォームは考えなきゃいけなくなってるわね」
「だな。親父やお袋の事を思えばバリアフリーも計算に入れなきゃならないだろうし、年金が全額支給されるとは限らない世の中で親の金は当てに出来ないだろうからな」
「当たり前じゃない、お義父さんとお義母さんには楽してもらわないと駄目よ! それに、単純にリフォームって言っても二世帯住宅になるんだから、そこも考慮しないとね」
「二世帯か、ハルヒは玄関や台所とかトイレが別にある方がいいのか?」
「うーん、プライバシーも大事だけど、あたしは家族の繋がりがある方がいいと思うの。だから台所も玄関も一ヶ所でいいし、リビングも広めで一ヶ所の方がいいわね。出来ればお義母さんと一緒に料理もしたいところね、あんたのとこの味も習いたいし。だけど、子供の事を考えたらトイレはもう一ヶ所ある方がいいかもしれないわ」
「なるほど。一階は親父とお袋のスペースにリビングと台所に風呂、二階が俺達の住居でいいのか? トイレは一階と二階に一つづつってとこか」
「そのくらいなら水廻りの心配もいらないはずよ。変にお風呂まで付けちゃうと構造上危ないかもしれないし」
「部屋はどうする?」
「基本は変えなくていいんじゃないかしら? あんたの部屋がそのまま夫婦の部屋になるだろうし、妹ちゃんの部屋が将来子供部屋になるって感じで」
「そうか…………妹も居ないんだったな」
「あのねえ、女の子はいつかお嫁に行っちゃうんだからしょうがないでしょ! 今からそんな顔しないの、まったく兄バカなんだから。あたしだって嫁に行ってるからこうして居るんじゃない、少しは分かりなさい!」
「そうは言うが、あの妹が嫁に行く姿なんぞ想像出来ないんだよ。まあ、その年でまだ家に居るってのもどうなのかと思わなくも無いが。子供にはいい遊び相手なんだろうけどな」
「だったら、家の近くに住んで貰う様に頼んでおきなさいよ。あたしも妹ちゃんが近くに居てくれた方が助かるしね」
「そればかりは相手次第ってとこか。それと、ハルヒ?」
「なによ?」
「出来れば狭くていいから俺に書斎など頂けないだろうか? 男なら誰でも憧れるスペースなんだよ」
「そうねえ、子供が小さい内は部屋が空いてるからいいけど。でも、子供部屋になったら書斎なんてスペースないわよ。それに、費用がかかりそうなものは基本却下の方向よ!」
「それは酷い、俺が金を出すんだぞ!」
「あたしだって産休ギリギリまで働くわよ! それで何とかローンも少なめで組めるはずだもの」
「そうなのか?」
「但し、あんたのお小遣いはこのくらいね」
「いや、これはないだろ?! 俺にだって付き合いってもんが、」
「将来の為よ! 子供の学費もあるのに、贅沢禁止!」
「だったらお前の方こそ!」
「あたしだって切り詰めるわよ!」
「それでもこのくらいは勘弁してくれよ、母さん」
「お父さんにお金を持たせたら碌な事しないじゃない!」
「お母さんこそ…………」
「いや、お父さんが…………」
























「いつの間にか夫婦の会話になってますね」
「凄く自然に子供さんが居る事が前提になってますぅ〜」
「バカップルからバカ夫婦に」