『SS』 とある男子高校生どもの通常会話・2:Dialogue

「ふっふ〜ん☆」
「どうした谷口? 顔が悪いぞ」
「違うよ、顔が崩れてるんだよ。で、どうしたの谷口?」
「お前らの俺への評価というものに対して一回話し合わなきゃなんねえな。だが、そんなもんはどうでもいいや。これを見ろ!」
「手帳だな」
「うん、真っ白な手帳だ」
「そうじゃねえだろ、ここを見ろ、ここを!」
「日曜か、何か書いてるな」
「ハートマークだね」
「そうなのか? 俺はてっきり豚の足型だと思ってたのだが」
キョンは後でぶん殴る。だがよく気付いたな、国木田! そうだよ、これ見てみろよ!」
「つまりはアレか、予定ありと言いたいんだな」
「そうさ、俺はちゃんと週末に予定がある男なんだよ!」
「デートかい? 一体誰なの、そんな物好き」
「一々引っかかるのは何でだか分からんが、光陽園の一年だ。どうやら登校中の俺を見て一目惚れってやつ? そんな感じで向こうからのお誘いってやつなんだよ」
「そうか、その子には眼科を紹介しないとな。だが後輩じゃないか、よく他校の一年上に声をかけてきたもんだな」
「同学年と先輩だったら、谷口がどういう奴なのか分かってるから声なんかかけないよ。後輩だとまだ知らないからね、谷口にとっては奇跡みたいなもんだよ」
「お前らを友人と呼ぶのはもう止める事にするけど、それも羨ましいからだろ? 罵詈雑言も負け組の遠吠えだと流してやるくらい、今の俺は心が広いんだ」
「まあ確かに羨ましい話ではあるな」
「な? そうだろ、キョン! お前には縁がありそうで無いだろうからな、涼宮たちなんかとつるんでたらチャンスなんか無くなっちまうぜ」
「そうかな? キョンは女の子の知り合いが多いじゃないか」
「ただ多いだけだろ、デートなんか出来っこないって! どうせ週末だって何も無いんだろうが」
「ああ、その通りだ。俺の日曜日なんてせいぜい朝早くに妹に叩き起こされて何事だと思えば朝一でハルヒの襲来を受けて朝飯を一緒に食ってから部屋で過ごして、どうにか帰らせてから長門と約束していた図書館に行って時間をかけて、昼になったら朝比奈さんと待ち合わせしてお手製の弁当をご馳走になってからちょっとあって、その後に鶴屋さんと合流してから買い物ついでに色々あって、そのまま知り合いにはなりたくなかったが橘京子という奴と会わざるを得なかったりしながらしばらくして、同じ仲間の周防九曜というのにもあれこれあった上で、夜に中学の同級生の佐々木と勉強とかしたりしてるだけだ」
「…………」
「羨ましいよな、俺もデートとかしてみたいもんだぜ」
「そ、そうだろ? お前も少しは俺みたいに女の子にモテる努力くらいしてみやがれ」
「そうは思うが面倒なんだよな、お前の幸運でも分けてくれ」
「バーカ、お前には何も分けてやんねーよ」
「へいへい、ちょっと便所行ってくる」
「…………なあ、国木田?」
「なんだい?」
「俺、デートするはずなのに負けた気がするんだけど」
「気のせいじゃないけど、気付かなかったのかい、谷口?」
「はあ? 何がだよ」
「気付かなかったのならいいよ、多分気付かないだろうし」
「そ、そうか……」



















「上手く曖昧に誤魔化してたけど、キョンって絶倫なんだなあ。一日七人ね、それも毎週か、よく体力が持つもんだね」