『SS』 涼宮ハルヒのふにふに

 その日、というか、今日も今日とて学生生活の中における放課後はここで過ごすものなのだと決められているかのような文芸部室である。
 授業が終ると同時に足が向く習慣になってから長い時間が経っているようでもありながらも、あっという間だと言われても納得しそうになりながら部室で過ごすのも悪くはないのだ。
 だがしかし、今日はいつもの部室でありながら若干趣きが違っている。辺りを見てみよう、俺が座るのはいつものパイプ椅子であり、長机の前だ。朝比奈さんはメイド服でお茶を淹れている。ここまでは普通だな、メイドが常駐しているのが普通と呼べるのかどうかは別問題だ。
 そして団長席には涼宮ハルヒが頬杖をついてマウスをいじくっている。つまりはいつもどおりって事だ。
 では違いは何かと言えば一目瞭然なのである。構成人数が足らないのだから当たり前だな。では、我らがSOS団の残りメンバーは何をしているのか? まずは古泉なのだが、これは単純にバイトなのだ。ハルヒの機嫌が悪いとかいう話じゃない、何でも『機関』への報告業務が溜まっていたからだそうな。なので前日から団長に報告して許可を貰っていた副団長は、
「出来れば回避させて欲しかったんですけどね。いくら涼宮さんの傍で活動しているとは言え、やはりある一定の報告義務が発生してしまうらしいんです」
 閉鎖空間に行くときよりも疲れた顔をした古泉が珍し愚痴めいた事を言ったのを俺は驚きと共に聞いたものだ。
「まあアルバイトをしている設定で良かったじゃないか、こういう時は言い訳しやすいだろ」
「それが唯一の救いですね。今後も同様の事態はあると思いますので、何かありましたらフォローしてください」
 出来るだけ善処するさ、お前のバイトが原因でハルヒの機嫌を損ねて本当のバイト出動なんてシャレにもならないからな。
 と、いうことで古泉は本日欠席なのである。まあ愚痴くらいなら聞いてやってもいいだろう、あいつも苦労してるだろうからな。
 そこでもう一人の欠席者である。本来この部屋で欠けてはならないはずの長門有希は、何ともいえない理由でここにいないのだ。というのも、長門を拘束しているのは六組の担任教師であり、理由は長門の進路相談であるからだ。
 何故長門のみ急な時期の進路相談に至ったのかと言えば、それは長門の能力の高さと反比例するような無表情が原因だ。成績優秀、運動能力抜群の優等生でありながら進路どころか現状においてほぼ無意味な部活動などに終始して良しとしている無反応に、教師の指導意欲を刺激されたというのが真相だろう。
 ハルヒは反対の姿勢を示したのだが、これ以上揉めて肝心の文芸部室を取り上げられては元も子もないので俺がハルヒを説得しながら長門スケープゴートとして面談中なのだ。教師の四苦八苦しながら長門とコミュニケーションを取る姿が容易に想像出来るな。
 こうしてSOS団は二名の欠席者を出しながらも休業することなく通常営業中といった次第なのだった。
では欠席者がいるからといって変化があるかと言われれば、元から何もする事のない連中が集まっているようなSOS団である。結局のところは何をするでもなく銘々好き勝手にしているのだが。
朝比奈さんは雑誌を読みながらお茶の管理に余念が無い。いつでも美味しいお茶を淹れてくださるのは絶え間無い努力とやかんの管理の賜物なのだ。
ハルヒはといえば、これもいつものネットサーフィンである。だらしなく頬杖をついたままマウスだけを適当に動かしているので何か見ているのかSOS団のホームページのカウントを無意味に増やす作業に終始しているのだろう。
ここで小さな変化があるとすれば俺だけだ、古泉が居ないのでボードゲームの対戦相手がいないというだけで。しかし、俺には別に古泉が居なくても時間を過ごせるアイテムがあった。長門セレクトの文庫本は読書というものに無縁だった俺の目からスケイルメイル四個分は取れそうな鱗を剥がしてくれて、只今絶好調読破中なのだ。適度な興奮と感動、読後の充実感は今まで味わった事のないものだ、早く読み終えて新刊を借りなければならないだろう。唯一の悩みは睡眠時間まで削ってしまって授業中に惰眠の時間が増えた事くらいか。




などと適当に時間を潰しながら、今日は長門タイマーの本を閉じる音が無いのでどの辺りで活動を区切ろうかなどと考えていた時だった。
それは唐突な呟きだった。
「あ〜、おっぱい揉みたい」
はあ? どうやら空耳のようだ、本に夢中になりすぎて妄想回路でも作動したのだろう。でなければ、パソコンの向こうから声など聞こえてくるはずがないじゃないか。
「こう、柔らかくてー、ボリュームがあってー、でも張りがあってー、おっきくてー、ふにふにでー」
聞こえない、なーんにも聞こえないー。だから朝比奈さん、そんなに怯えなくても大丈夫ですから。段々と部屋の隅に移動してますけど、そっちは行き止まりなんですよ?
「絹のように極め細やかでー、吸い付くような肌触りでー、両手で鷲掴んだらはみ出すようなー、でも弾力があって跳ね返されるようなー、そんなおっぱいを揉みたい、あたしは」
うむ、具体的過ぎる空耳だな。とても女性が発言しているとは思えないから空耳確定なのだろう、モニターの向こうで指をわきわきとしている両手が見えているけど、それはイリュージョンだ。春の夜の夢が見せた蜃気楼だ。そうだと言ってくれ、頼むから。
最早読書どころではない、この幻想境から早く解き放ってくれ。俺の右手には幻想殺しは装備されていないんだ、いい加減目を覚まそうぜ。朝比奈さんがロッカーの前で小さくなっている。非常に可愛らしいが、逃げ道を自分で塞いでいるとしか思えないんだけど。
「よしっ! みくるちゃん!」
いきなりハルヒが立ち上がった。良かった、どうやら現実に戻ってこれたようだ。いつの間に俺は寝ていたんだろう、長門タイマーが無いから油断していたのだろうか。どのくらい時間が経ったのか分からないが、もう帰ろうぜ。
「おっぱい揉ませなさいっ!」
まだ夢だった。いや、もう否定しても遅いのだろう。これが現実だ。アホか。
「い、いやでしゅ、だめでしゅ〜」
ロッカーの前で縮こまった朝比奈さんが両腕で胸を隠して泣きそうになっているのだが、どうみても逆効果だ。震えているメイド姿は見る者全てを嗜虐的な気分にさせてしまう効果しかない、俺ですらそう思うのに、狩人になった団長からすれば余計にな。
「ふっふっふ、何も痛い目に遭わせようってんじゃないのよ。むしろ気持ちいい事なんだから、おっぱい揉まれるのなんて」
セクハラの塊だ、とても女子高生のセリフとは思えない。目を爛々と輝かせ、両手をわきわきしながら獲物へと近づくハルヒからはオッサンオーラしか感じない。震える生まれたての小鹿のようなメイドさんは、それでもささやかな抵抗を示した。
「い、い、いやああああああっ!」
立ち上がって逃げ出そうとした朝比奈さんだったのだが。はっきり言おう、場所が悪すぎる。
「遅いっ!」
と、あっさりハルヒに背後から抱きつかれてしまうのだった。何故出口から一番遠いとこにいたんだ、この人は。
「ひ、ひぃぃ……」
「覚悟しなさい、みくるちゃ〜ん!」
覚悟もへったくれも、既に朝比奈さんはハルヒに抱きかかえられている。まさに籠の中の鳥、まな板の上の鯉だ。抵抗などあの可憐にして華奢な朝比奈さんに出来ようはずも無く、腰に回されていたハルヒの両手は確実に上へと上がっていった。そして、


むにゅ!


大げさではなく、そのような擬音が俺の脳内に鳴り響き、
「ふにゃあ〜っ!」
と、可愛らしい悲鳴が朝比奈さんの口から洩れたところで、俺は部屋から飛び出すはずだったのだが、ふにふに。
「待ちなさい、キョン!」
ハルヒの一喝で飛び出すタイミングを無くしてしまった。ふにふに。普段と違い、読書などという集中力を要する作業に従事していたから切り替えが上手くいかなかったのかもしれない。
かといって、どうしろというのだ。ハルヒは覆いかぶさるように朝比奈さんを抱きしめたまま、両手いっぱいに朝比奈さんの胸を掴んでいる。ふにふに。というか、揉んでいる。ふにふに。揉みしだいている。ふにふに。揉み解している。ふにふに。揉みまくっているのだ。ふにふに。
「ほ〜ら、いいでしょ〜。本当に大きいわね、このおっぱい! 柔らかいしー、両手に余るし、重たいわね、これじゃ肩も凝るでしょ?」
ふにふに。
「ひゃあぁぁっ! やめ、や、め、てぇ〜! ダメです、そんなに揉まないでぇ〜!」
ふにふに。朝比奈さんの胸部が別の生き物のように踊る。ハルヒが下から持ち上げて手を離すとバウンドするんだぜ、しかも何回も。ふにふに。縦揺れする胸を見るだけで酔う奴もいるんじゃないだろうか、大げさじゃなくそう思う。
そのバウンドする乳を鷲掴みにするハルヒ、リバウンドを制する者がゲームを制するのだ。ふにふに。押しつぶす、持ち上げる、下からこねくり回す。自由自在だな、朝比奈さん。ふにふに。
「あーもうっ! 可愛いわね、みくるちゃんは! しかも何回揉んでもまた揉みたくなるこの揉み応え! 正におっぱい麻薬! 中毒患者続出間違いなしね!」
ふにふに。その中毒患者がナチュラルハイのまま、朝比奈おっぱいを揉みしだいている。何だ、この状況。ふにふに。
「やめてぇ〜、もういやぁ〜、ダメぇ〜……」
ずっと胸を揉まれ続け、朝比奈さんから力が抜けていくのが分かる。ふにふに。今や為すがままなのだ、もう少し抵抗してもいいと思うのに。ふにふに。
だが、朝比奈さんはハルヒには逆らえない。ふにふに。実際に快楽を覚えているとは思えないが、我慢ばかりしなけりゃならないのは哀れだ。
「おい、ハルヒ! お前、いい加減にしろ! 朝比奈さんから手を離せ!」
遅きに失している感は否めないが、ようやく俺はハルヒを止めるべく声を上げた。正直に言えば展開の滅茶苦茶さに声も無かったのだ、決して見惚れてなどいない。ふにふに。ただ、朝比奈さんがブラをつけているのか、着替える時に外しているんじゃないかと疑いを持ったのも事実だ。だって、そのくらい揺れるんだぞ、朝比奈おっぱい。
しかし、俺の声などで手を休めるハルヒではない。ふにふに。それどころか、指の動きは速さと巧みさを増している。ピアニストかギタリストになれば一流になれるんじゃないか? そういえば、こいつギターも上手かったな。ふにふに。納得の指使いである。
朝比奈さんの顔が呆けているのは一体何が原因なのか。ふにふに。諦めか、快感なのだろうか。まだ経験値の少ない俺には分からないが、緊急事態なのは間違いない。ふにふに。
これ以上はまずい、と俺がハルヒを止めるべく背後に回った時だった。ふにふに。
「そうだ、キョン? あんたもやってみる?」
はあ? 何をだ? ふにふに。
「今日だけ特別に許可してあげるわ。あんたもみくるちゃんのおっぱいを揉んでもいいわよ!」
それは悪魔の誘惑か? それとも団長の器の広さとでも言って欲しいのかよ。ふにふに。とにかく、とんでもない事を言い出したハルヒに、
「や、やめ…………キョンくん、助けて……」
涙声の朝比奈さんが、抵抗出来ないまま胸を揉まれ続けながら懇願する。ふにふに。どこをどう見てもエロゲーだ、しかも絡んでいるのは美少女同士で誘われてるのは俺なのだという。
「ほら、こ〜んなにおっきいのよ、みくるちゃんのおっぱい! これを思う存分揉みしだいて構わないって言ってるの! 男なら一度は憧れるシチュエーションでしょ? 遠慮せずにやっちゃいなさい!」
それは朝比奈さんの胸であって、お前のものじゃないだろうが。ふにふに。手を休めないハルヒは得意顔でアホな事を言っている。
「いいから! あんただって揉みたいでしょ、おっぱいを!」
だから何故に俺をそこまで貶めたいのだ、お前は! ふにふに。泣いている朝比奈さん、憎たらしいほど笑顔のハルヒ。ふにふに。
…………なんか腹立ってきた。久々にゆっくりと読書などしていたのに、いきなりセクハラ発言から実行に移して、おまけに俺にまで片棒担がせようとするハルヒの傍若無人に。か細い声で懇願しか出来なくなっている朝比奈さんが可哀想だと思わないのか、こいつは。
そう思ったら、いつしか俺は朝比奈さんを抱きしめているハルヒの背後に立っていた。
「本当にいいんだな?」
「もちろんよ! 思いっきりおっぱいを揉んであげなさい!」
「ヒッ! きょ、キョンくん、やめてぇ〜!」
止めません! 俺は背後から両手を広げ、


むにゅ!


と、おっぱいを鷲掴みにした。
「へ?」
「え? ええっ?!」
ふにふに。ああ、確かに柔らかいな、それにでかい。
「ちょ、ちょっと待って! それ、あたしの! あんた、何勝手にあたしのおっぱい揉んでんのよ!」
お前が揉めと言ったんだろうが。ふにふに。
「止めなさいっ! 離せっ!」
断る! 振り解こうとしたハルヒだが、俺が胸を掴んだ手に力を込めると、
「いやぁんっ!」
ほとんど抵抗出来ずに跪いてしまった。ふにふに。もちろん俺は手を止めない。いや、止められなかったというのが正解だ。
ハルヒのおっぱいはそれほどまでに柔らかく、俺の手にフィットしたのだ。ふにふに。
「確かに柔らかいな、それにボリュームもある」
「や、やめて……」
ふにふに。
「指がめり込む程大きいのに、押し返されるような弾力感だ」
「い、言わないで……だめ……」
ふにふに。ふにふに。
「けど、これちょっと邪魔だな」
「へ? なに、ちょっと?!」
俺は手を動かした。正確に言うとハルヒの制服の下から手を突っ込んだ。一気に同じ体勢に戻る。つまりおっぱい鷲掴み。ふにふに。制服がめくれ上がって下着が見えている。可愛いブラしてるな、お前。
「ちょっと! いい加減に、」
「好きにしろと言ったのはお前だ」
ふにふに。
「ひゃああぁぁんっ!」
どうせすぐに力が抜けるのに、いらん抵抗するな。まあそういうのも可愛いけど。ふにふに。
下から持ち上げるとずしりと重い。しかも張りがあるから形が崩れない、周辺を優しくさするように揉んでいく。
「充分大きいぞ、ハルヒのおっぱい」
「い、言うなぁ……んっ! や、持ち上げないで……」
何度か持ち上げては離してみる。ふにふに。朝比奈さんのようなリバウンドはないが、重力に逆らうように上向きの形のよさは何度やっても見事なものだった。ふにふに。触り心地も最高、と言いたいところだが、
「やっぱ邪魔だわ」
「ええっ?! 嘘、やめ、」
左手でハルヒのおっぱいを揉みながら、右手は背中へ。ほとんど見ないままで指先を動かすとホックが外れる。我ながら器用なもんだ、このスキルが別の場所で生かされないのが悔やまれる。
「キョ、キョン?! 待って、それだけは、」
うるさい。もう俺の手は次の動作に移行済みだ、即ちブラの中に手が。ふにふに。
「いやぁぁっ!」
嫌って言う割にはさっきから何も抵抗が無いんだけど。ふにふに。それどころか、前かがみになればその分ブラと肌には隙間が開き、手がより奥へと入る訳で。
今や俺の両手はがっちりとハルヒおっぱいをホールドした状態だ、しかも生で。
「ああ、これが絹のような手触りってやるか。ブラ越しでは分からん感触だな。しかも吸い付くようだ、肌理が細かいからすべすべしてる」
「言わないで……やだ……」
そうは言うが、本当に手が離れないんだ。ふにふに。柔らかく揉みしだくと指が中まで入っていくようだ、多少乱暴にしてもすぐ戻る弾力性も兼ね備えている。ふにふに。
「も、もうやめて……んっ!」
 などと言われて止める奴がいるのならばお目にかかりたいものだ。ふにふに。もし居たら「ハルヒのおっぱいは俺のものだ!」とぶん殴るだけだが。あれ? 話がずれてないか? まあいい、それよりもハルヒの触り心地に酔う方が建設的だろう。おっぱいを揉む事が建設的だなんていい世の中だ。ふにふに。
「な、なにもいいことなんか……」
「気持ちいいだろ?」
はえっ?!」
 間抜けな声を上げても無駄だ。ふにふに。シルクの肌にうっすらと浮いた汗がしっとりとした湿り気を帯びて俺の両手を吸いつかせているのだからな。
「疑問系に疑問系で答えるな。訂正する、気持ちいいと言え」
「だ、誰に命令……」
 うるさい。ふにふに。手のひら全体で包み込んでいても感触で分かるんだぞ。
「早くしろ、乱暴にされたくなければな」
「ふ、ふぇぇ……」
 お前は朝比奈さんか。しかし朝比奈さんではないからぐいぐいと揉み込むだけなのだ。ふにふに。全体を包み込んで手のひらで中心部分をこねくり回すとコリコリした感触があるのを見逃す俺だと思うなよ。
「んやっ! そ、そこぉ……」
「気持ちいいんだろ? 素直に言えよ」
 耳たぶまで赤くなっている穴の奥に息を吹き込むように囁きかければ、涙目のハルヒが震える。おいおい、胸だけじゃ足りないのか? ふにふに。唇を寄せて耳の中に直接届くように、
「気持ちいいです、と言え」
 言った後に、ふっと息を吹きかける。ふにふに。
「ひゃぁぁぁんっ!」
 甲高い嬌声を上げたハルヒが、ビクンッと体を硬直させるが俺に胸を鷲掴みにされたまま背後から抱きつかれている為に、跳ねることも出来ずに俺の腕の中で弛緩するしかないのだ。ふにふに。
 その間も俺の手は動きを止めることはない。優しく微妙な振動をおっぱいに与え続けている。ふにふに。感覚が途切れる事のないままでハルヒの体が震え続けている。
「あ、う……それ……いや…………だめ……」
「それなら言う事は分かるだろ、なあハルヒ?」
「あ…………」
 口を紡いだハルヒの様子を見ながら指先の動きを止めない。ふにふに。手のひら全体はすっぽりと胸を覆っているが指先はおっぱいにめり込ませては戻している。本当に吸い付くようで、しかも熱い。ぐっと握り締めるのではなく、ひたすらに弱い振動でハルヒの胸全体の感触を楽しんでいると。ふにふに。
 ついにハルヒが折れた。涙を浮かべた目がそっと伏せられ、小さな声で言ったのだ。
「…………気持ちいい」
「なんだって? 聞こえないぞ」
「いじわる……」
「もう一回、今度は聞こえるようにな」
「気持ち、いいです…………もういいでしょ? 許して……」
 許すも何も、気持ちいいならいいじゃないか。ふにふに。口に出した途端におっぱいの感触が変わったのが分かる。具体的に言えば、熱が上がってしっとり感が増して張りが出てきて中心の一部が固くなってきた。ふにふに。
 こうなれば俺もノリノリである。ふにふに。いや、既にノリノリだったのが加速していっただけですけど。
「どこが気持ちいいんだ?」
「……む、胸」
「だったらはっきりと言えよ、おっぱい気持ちいいですって」
「そんな……無理……」
「言え」
 手のひらを回して固く尖る部分をコリコリしてやる。
「ふゅにゃ〜ん! い、いやぁ! お、おっぱい気持ちいいですぅ!」
「誰のおっぱいが気持ちいいんだ?」
「あ、あたしの! あたしのおっぱい気持ちいいの!」
ハルヒはおっぱいを揉まれて気持ちいいんだな」
「そ、そうです……おっぱい揉まれて気持ちいいです……」
 ぽろぽろと涙を零しながら快感に身を任せるハルヒ。ふにふに。やばい、可愛い。我慢出来なくて半開きになった唇からよだれが垂れてるのにも気付かないハルヒ萌え。ふにふに。
「そうか、ところでこのおっぱいは誰のものだ?」
「え?」
「誰の為のおっぱいなのか、言えと言ってるんだ」
「そ、それは……」
 じれったいので少しだけ強めに鷲掴みすると固くなった部分が胸の中に押し込まれるような感覚があった。ふにふに。
「あぁんっ! きょ、キョンの! キョンのですっ!」
キョン?」
キョンさま! キョンさまのおっぱいですぅ!」
「そうか、このおっぱいは俺のものなんだな?」
「そうですぅ、あたしのおっぱいはキョンさまのものなのぉ〜っ!」
ハルヒのおっぱいはキョンさまのものですって言え」
「は、ハルヒのおっぱいはキョンさまのものですぅ〜!」
「このおっぱいはいつでも俺の好きにしていいんだな?」
「うんっ! はいっ! ハルヒのおっぱい、いつでもキョンさまの好きにしてくださいぃ! 好きなだけ揉みしだいてくださいっ! ああ、もっと、もっとしてぇ〜!」
「ついに本性を表したな、この淫乱メス猫め」
「そうっ! そうなの、ハルヒはイヤラシイメス猫なのぉ! だからもっとぉ〜!」
 おいおい、何かスイッチ入っちゃったぞ。ふにふに。スカートの中からなにかぽたぽたと雫が落ちてるんですけど。ああ、床が濡れてって誰が片付けるんだよ。俺か、そうですよね。
 視点の定まらない靄のかかった瞳が虚空を見つめている。ふにふに。だらしなく開いた唇からよだれを垂らし、まあ下半身からも同様なものを垂らしているけど。ふにふに。最早ハルヒハルヒではない、だから俺も俺ではないのだろう。多分。
「ほらメス猫、どうして欲しいのか言えよ」
「あ、あの…………もっと……」
「もっと、なんだ?」
「もっと、して、ください……」
「具体的にどうされたいのか、いやらしくお願いしろ」
「あ、あたしの、淫乱メス猫ハルヒの、いやらしいおっぱいをいっぱい揉んでいじってくださぁぁいぃっ!」
 最高だった。あの傍若無人天上天下唯我独尊、我が儘が服を着て歩いているような涼宮ハルヒが、涙を流して虚ろな瞳で懇願しているのだ。これに応えない男など存在しない、したらぶっ飛ばす。いや、このハルヒは俺のものなのだからしてもぶっ飛ばす。
 なので行為は続行される。ふにふに。というか、続行され続けている。俺の手は会話の最中も休むことなどなかったからだ。休めるわけもないだろう、ハルヒのおっぱいはそれほどまでに魅力溢れるおっぱい麻薬なのだから。
 手のひら全体で包み込む。ふにふに。押し込む。ふにふに。指を食い込ませる。ふにふに。引っ張る。ふにふに。自由自在に形を変える柔らかさでありながら形が崩れることのない張りの良さに絹のような滑らかな肌触り。ふにふに。それがうっすらとかいた汗でしっとりとした触感を感じさせながらも色白な肌が熱を持ってほんのりとピンクに色付く。
「あっ! あんっ! それ、もっと、ああっ! んっ! あぁ〜んっ!」
 甘ったるい嬌声が耳朶をくすぐる。ふにふに。視覚的にも聴覚的にも触覚的にも、あえて言えば嗅覚的にも、つまりは五感全てがハルヒに占領されていく。食感? それはまた後に取っておくとして。
 ああ、床に小さな水溜りが。ほぼハルヒのスカートの真下の部分に。なるほど、嗅覚を刺激する正体はこれか。しかし俺の手はハルヒおっぱいから離れる事は無い。あろうはずはない。ふにふに。
「はふ……んっ…………あふ……」
 最早四肢に力が入らないのか、声も出さない。ふにふに。されるがままのハルヒなのに、俺が触っている部分だけが反応しているのか、たまに全身がピクピクと震える。ふにふに。
「あ、あぁ……もう……らめぇ…………」
 うん、舌足らずになっちゃってるハルヒが可愛すぎるのだが、ここは黙っておく。ふにふに。
「もう……キョ〜ン…………」
「どうされたいんだ?」
 言われなくても分かってるのだが。ふにふに。さっきからコリコリしてるし。間違いなくここが弱点だ、それを分かっていながら少しづつしか刺激してないからな。
「あたし……あたし、もう…………」
「はっきりと言え、どうされたいんだ?」
 ふにふに。顔を紅くしようが、恥らおうが、それがとんでもなく可愛かろうが関係ない。そんなハルヒに言わせるからこそ価値があるのだ、何の価値だかは各自の判断に任せる。
 その間も忘れてはならない。ふにふに。手のひらを少し浮かせて先端にだけ触れたりすれば我慢出来なくなるのは当然なのだ。ふにふに。
「ああっ! もう、らめぇっ! いじって! あたしの、ハルヒの乳首を摘んでぇ〜! コリコリしてぇ〜っ!」
「何だ、そんなに乳首をいじめられるのが好きなのか?」
「うんっ! うんっ! 乳首いじめてぇ! イカせてぇぇっ!」
 何かハルヒが壊れたような気がするけど、俺も壊れているのだろう。ふにふに。お言葉通りに、とばかりに親指と人差し指の二本でハルヒおっぱいの頂点にある乳首を摘みあげると、
「きゃあぁぁぁぁぁんっ!」
 なんて声を上げて全身を痙攣させるメス猫がいるのだ。ふにふに。どんだけ弱いんだ、こいつ。そのまま指で摘みながらいじってやると甘ったるい喘ぎ声しか上げなくなる。ふにふに。
「乳首、感じるのか?」
「きもちいい〜、かんじますぅ〜」
「こうされるのが好きなんだろ」
「ひゃぁんっ! すきぃ〜、コリコリされるのすきなのぉ〜」
「これは?」
「さきっぽぉ〜チョンチョンつっつかれるのも〜」
「このスケベな乳首は誰のものだ?」
キョンさまのものですぅ、ハルヒのおっぱいはぜ〜んぶキョンのなのぉ〜」
 自分が何言ってるのか、もう分かってないんだろうなあ。ふにふに。既に視線が飛んでいるハルヒは俺の手の感触だけで意識を保っているような状態だ。
 ならばお望みどおりにしてやろうじゃないか。
「だったらお願いしてみろよ、乳首いじられてイカせてくださいってな」
「おねがいしますぅ〜、あたしのちくびいじってぇ〜、いじめてぇ〜、イカせてくださぁ〜い……」
 素直すぎる。だが、それがいい! だから、
「よく言えました」
 と言って乳首を力任せに摘み上げて引っ張ってやると、
「あひぃぃぃっ! い、イキますっ! いや、イッちゃう! イクの、イッちゃうのぉぉぉぉっ!」
 絶叫と共に痙攣したハルヒが白目を剥いて倒れこんできた。それを抱きしめて支えてやる。というか、ずっと胸を揉んでたから密着してたので力の抜けたハルヒを支えてやっただけなのだが。
 足元には水溜りが出来ているので、それを避けてハルヒを横にする。気絶したハルヒは幸福そうな笑顔だった。
 それを見た俺もどこか達成感というか満足している。多少物足りないのは仕方ないだろう、帰ってから処理するしかない。何を、というのは野暮だろう、俺も健康的な男子高校生のはしくれだ。










 と、ここで忘れかけていたのを思い出した。最初はこの人を助けようとしたからじゃないか、つい調子に乗ってしまったけど俺は常にあなたの味方ですから。
「朝比奈さん、大丈夫ですか? ハルヒならもう何もしませんから安心してください」
「………………」
 あ、あれ? どうしたんですか、真っ赤な顔して。
キョンくんのバカーッ!」
 そして俺は涙目の朝比奈さんにぐーで殴られたのであった。何故だ。