『SS』 とある男子高校生どもの日常会話:Dialogue

「な? この子いいと思わないか?」
「まあ確かに谷口の好きそうな感じだよね」
「そうか? 俺には良く分からんのだが」
「なんだぁ、キョン? お前、ちょっと美人に囲まれてるからって調子乗ってんじゃねえか?」
「違う。このグラビアの女の子が可愛いというのは誰が見ても一目瞭然で納得できるんだが、分からんのはお前だ、谷口」
「どういうこと?」
「いや、な? 谷口がいつもいいと言ってる女の種類が違いすぎるもんだから本当に好きなのかと思わなくはないなってな。全女生徒のランクを付けるのも構わないが、お前の本当の好みってどんな女なんだ?」
「ああ、そう言えばそうだね。毎回グラビアの女の子が違うけど谷口なら好きそうだなって思ってたもんだから」
「結構いい加減だったんだな、国木田」
「ほぼ毎日だからね。でも僕も知りたいな、谷口の好みってどんな子なんだい?」
「おいおい、お前ら…………まあいい、俺の好みと言えばやはり朝比奈さんだろ! あの笑顔にあの胸! 上級生、下級生問わずにナンバーワンだぜ! 出来ればもう少しお近づきになりたいもんだぜ」
「まあ、朝比奈さんは可愛いよね」
「だろ? なんで涼宮さんかとつるんでんだか。おかげで誰も近づけないぜ……」
キョンから見てどうなの? SOS団で接点あるじゃない」
「ああ、確かに朝比奈さんは天使そのものの魅力に溢れた可愛いお方だ。毎日淹れてくれるお茶も極上だし、何よりもメイド姿で甲斐甲斐しく働くお姿に癒される。だが、朝比奈さんと言えば胸ばかりを強調されるが、それは違うぞ。そりゃあの胸は見た目どおりにボリュームがあって、触ると指どころか掌全てが包み込まれるような柔らかさながら、弾力もあって尚且つ感度もいい。巨乳の胸は不感症だというのは都市伝説だと俺が知ったのも朝比奈さんのおかげだ。しかし、朝比奈さんは胸だけではない。あのヒップも同様に柔らかさの中に張りがあり、しかもどの部分も感じてしまう程なんだと断言出来るな。要するに朝比奈さんとは、全身これ全てが性感帯と言っても過言ではないくらいに敏感であって、それでいながらも奉仕の心を忘れずに致してくれるような方でもある」
「………………」
「どうした?」
「あ、そういえば長門さんなんかどうなの? ほら、谷口のランクでも朝比奈さん程じゃないけど上位なんでしょ?」
「あー、長門さんは確かに美人だけど無口だし、何考えてるのか分かんねえからなあ。ああいうのはダメだ、もっと一緒に居て楽しい方がいいぜ」
「そんな事はないんじゃないかな。どうなの、キョン?」
「そうだぞ、谷口。確かに長門は無口だが、言うべき事はきちんと言う奴だ。それに何を考えてるのか分からないというが、あいつの目を見れば大体何を言いたいのか分かってくるようになる。それに、最近は素直に自分を出す事も覚えてきているんだ。どこで覚えてきたのか知らないが、いつも俺の膝の上に乗ってきては耳たぶを甘噛みしながら、「かまってほしいにゃん」って息を吹きかけるように囁くくらいは積極的でもある。あいつの部屋に三日も泊まれば嫌でも分かるんだが、意外と夜は大きな声を出せるんだぞ。甘えが昂じて懇願する時の泣き声なんかは普段のあいつからは想像出来ないだろうけどな」
「………………」
「まあまあ、そんな長門さんが見れるのはキョンくらいだと思うけどね。そういや、美人と言えば涼宮さんだろうけど、谷口は全然好みじゃないんだよね」
「当ったり前だろ! そりゃ見た目だけなら俺だって美人だとは思うけど中身が最悪だ、あんな我がままな女は頼まれたって御免だぜ。あいつがSOS団なんて馬鹿なことやってなけりゃ、朝比奈さんにだってもっと声かけてるのによ」
「だってさ。キョンも大変だね、涼宮さんの相手も」
「まあな。ハルヒは見ての通り傍若無人を絵に描いたような奴だし、実際に俺も苦労かけられてばっかりだ。けどな? 我がままなのかと言われれば、そうでもないと答えられるかもな」
「え?」
「な、何でだよ? あの涼宮だぞ、あいつが人の言う事なんか聞く訳ねえじゃねえか!」
「そうだな、普段のハルヒは誰の言う事も聞く耳も持たないほど自己中心的だ。けどな?」
「けど、なんだ?」
「あいつ、ああ見えてベッドの上だと俺の言う事に逆らった事なんか一度も無いんだぜ。この間だって、」
「この間が何なのかしら〜?」
「ゲッ! ハルヒ!」
「さっき教室に戻ってきたら随分と楽しそうな話をしてたわね。あたしが何だって?」
「さ、さっきって何時だよ?」
「谷口が中身が最悪って言ってたとこからかしらね」
「うわっ! あ、あれはキョンの奴が……」
「てめえ、谷口!」
「まあ、あんたの事はどうでもいいわ。それよりもキョン、あたしがその、ベ、ベッドの上で、何ですって〜?」
「いや、それは流れってやつだ! 言葉のあやだ!」
「うるさいっ! いいからちょっと来なさい!」
「ま、待てハルヒ! 話し合おう、冷静になれ!」
「いいから黙って来いっ!」
「待ってくれ、ネクタイを引っ張るな! 死ぬ、首が絞まる!」
「あーあ、行っちゃった。でもどうせ上手くやり抜けるんだろうね、キョンは」
「………………」
「結局分かったのはキョンが幸せ者って事くらいかな。で、谷口の好みって何だったんだい?」
「ああ、今ハッキリ分かったよ、俺の好みのタイプってやつがな」
「どういう人なの?」
キョンに惚れない女が俺の好みのタイプだ、間違いない」
「あー、だったら卒業までは谷口に彼女は出来ないのかあ。残念だなあ」
「う、うぅ…………ウワーンッ!」