『SS』 たとえば彼女で……… 5

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 バレンタインイベントのせいで思った以上に時間が経過してしまい、適度に話しながら喫茶店でお茶していたりすると気付けば夕方と言える時刻となっていた。まだ寒いこの時期は日が暮れるのも早く、そろそろ街灯も灯り始めている。
「どうする? 夕食もこっちで食うか?」
 財布は厳しくなってきているが耐えられないほどではない、それにキョン子なら最悪ワリカンを承知してくれるので何とかなるだろう。しかしキョン子は少しだけ考えると、
「ん〜、魅力的な提案よね。でも帰りの電車の時間を考えたらちょっとここで時間を食うのは怖いかな」
 こんなところは冷静な奴だ。佐々木という奴の友人をずっとやっていたら慎重さも移ってくるものなのか? 少なくともSOS団ならばまだ帰るという選択肢は無いだろう。
「その後はどうすんのよ?」
「さあ、多分その時に考えるんじゃないか?」
 そう言うとキョン子に「何だかんだで染まってるのねえ」とため息をつかれてしまった。そこまで言われたくないぞ、俺が帰ろうと言っても反対されるだけなんだ。
 やれやれ。二人で同時に呟いて肩をすくめた。苦労してるね、そうだよ、と無言で会話するように。
 まあキョン子の言う事の方が正しいのは確かなので俺もそれに従う事にする。だが、
「だから帰るぞ、九曜」
「―――えー?――――いーやーだー――――――」
 駄々っ子九曜さんがじたばたしたのは言うまでも無い。突然お子様化する宇宙人なのだが、
「明日は学校なんだから帰るぞ。佐々木と橘、それと藤原さんに怒られちゃうじゃない」
 俺の世界ならともかくこっちではキョン子の方が強いらしい。宇宙人相手に何故ここまで強気になれるのか分からんのだがなあ。それとやはりあの未来人をさん付けするのに違和感がある。
 とにかく無表情なのに不満気な九曜をキョン子が引きずるような形で俺達は電車に乗るのであった。ついでに言えばキョン子は片手で九曜の手を繋ぎ、もう一方で俺の腕を抱えたままだったのだが。






 駅の改札を抜けると日は既に落ちていた。キョン子の言ったとおりに早めに帰って正解だったのかもな。そして三人で慣れた道を歩く。
「さて、どうしようか?」
「うーん、九曜にも言ったけど明日は学校だしね」
 キョン子や九曜が通うのは光陽園で、俺の世界とは違い共学の進学校でもある。呑気な公立の北高に通う俺に比べれば学業などに集中せねばならないのだろう。
「あの坂道を登るよりはマシかもなって思うけどね」
 そうだな。しかし朝比奈さんでも通えるのだから慣れれば勉強なんかよりはいいような気もするぞ。するとキョン子はクスクスと笑いながら、
「勉強だってそうだよ。あたしなんかは高校ではギリギリだけど何だかんだで慣れていってるもん。まあ佐々木のおかげだけどね、あいつが中学の時に一緒じゃなかったらこんなに勉強なんかしてないわ」
 同じく中学を佐々木と過ごした者としては耳の痛い話だな、あいつの努力をよそに遊び歩いたツケが今ここにあるような。だが佐々木だって俺を誘おうとは思ってなかった節もあるし、キョン子だからなのかと思わなくも無い。やはり同性と異性の差があるのだろう。
「でもそのおかげで九曜や橘と知り合えたんだけどね。あ、藤原さんもだ」
 こっちはハルヒ長門、朝比奈さんとついでに古泉もだな。それがいいのか悪いのかなんかは訊かない方がいいんだろう。
「答えはお前が一番知ってるだろ?」
 なんて笑って言われるに決まっているのだから。面子は違うが自分で選んじまったんだ、愚痴は言っても代わって欲しいなんて思いはしないのさ。
「それに、こうなったからこそお前にも会えたんだからね」
 だな。お互いが違う世界に居るから会えた、それは奇跡に近い話だ。不思議な出来事には慣れたとはいえ、こんな不思議なら大歓迎っていったところだぜ。
「―――――天蓋領域を―――――よろしく――――――」
 ああ、そうだな。まあお前の親玉を信用していいのかは分からんが。
「あたしから見たら情報なんとかの方が信用出来ないけどね」
 そうかもしれないがウチの宇宙人を見たら分かってもらえるさ。俺だってあいつの親玉は信用してないが、インターフェースさんは信頼してるのだから。
「九曜もそうだもんね!」
 キョン子に肩を抱かれた九曜が「―――――そう」とあいつばりに頷くのを見て、意外とあいつと気が合うのかもしれないなと思った。親玉同士はどうか知らないが、俺達は別に争う意味はないからな。







 結局、俺達はいつもの公園にやってきていた。つまりはお別れが近いってことだ、デートもお終いなんだよな。ただ今回の救いはキョン子の様子が明るいままだということだ。
「だってさ、次もあるんだって思えちゃってるんだよね」
 俺が買ってやった服が入った紙袋を見せられればそう思うしかないよな。俺だって春物の衣装を着たキョン子に会いたくないなんて言えるはずもない。
 だけど素直にはい、次ですって気分でもなかったのだ。そう、今日一日を楽しんだ俺なのだが満足しているのかと言えば違う。
 何故かって? まだ俺は肝心なものを貰ってないんだぜ? 今日は何の日だ、分かっていて期待していないほど俺は枯れていないんだ。これだけデートを楽しんだのにまだ俺はキョン子から一番の目的を達成させてもらってないのだからな。
「ふっふ〜ん、顔に出てるぞ?」
 何がだよ、と言いそうになってどうせばれてるんだからと口を閉じる。上目遣いで意地悪そうに笑うキョン子は今日一番楽しそうだ、ここにきてからかうってのは無いと思うぞ?
「はい、どうしたいのか言いなさい」
 うわ、言わせる気だ。俺の方から催促するなんて完全に欲しがってるみたいじゃないか。
「じゃあ止めとく?」
 ニヤニヤと笑うキョン子。くそっ、こいつ分かっててやってるなんて何て意地が悪いんだ。少なくとも俺はこんなに性格は悪くないぞ? 多分。しかし、ここまでくれば男の方が圧倒的に弱かった。目の前にいる女の子に逆らえるとは思えない、というか自分の欲望にも勝てる気がしない。だからこそ情けなくも頭を下げるしかないのである。
「分かった、降参だ。キョン子、俺に…………チョコをくれないか?」
 言った瞬間に顔が赤くなるのが分かった。これは酷い、改めて思っても酷い。何という羞恥プレイだ、プライドを根こそぎ持っていかれた気分だぜ。
 しかし言わせた本人は最高の笑顔で、「よろしい!」と言って綺麗にラッピングした箱を取り出した。ずっと用意してくれていたのかと思うと感動もひとしおだな。
 とりあえずはキョン子からチョコを貰える、と思って手を出したら箱を引っ込められた。何でだ?
「その前にちょっと訊きたい事があるんだけど」
 何だよ、まだお預けって流石に酷過ぎないか? だがキョン子はお構いなしに、
「お前、一昨日から幾つチョコ貰った?」
 などと訊いてきた。何故かと言えば今日は日曜日なので俺がもらう可能性としては学校のある一昨日が一番確立が高いからだろう。
「何でそんな事訊くんだ?」
「いいから! 幾つ貰ったのか教えてよ!」
 どうせ全部義理なんだからいいじゃないか、そんなに気にしなくても。とはいえキョン子がどうしてもと言うので一昨日からの流れを思い出す。
「まあ今朝に母親と妹からもらったな」
 家族をカウントしてる時点で悲しいものがあるのだが正直に言わないとキョン子が怖い。
「それから?」
「昨日SOS団の連中からは貰ったな、これもまあイベントだからハルヒが見逃すはずないし」
 思ったよりも普通に過ごせたのが幸いだったくらいだ。精々不思議探索が俺と古泉がSOS団女子を探すかくれんぼになったくらいで。二人で町中を走り回った挙句に休日の学校に不法侵入したりとそれなりに大変だったのは記憶に新しい。
「ふーん…………まあそんなものかもね――――――素直じゃなさそうだし」
 何か小さく呟いたがSOS団は毎回こんなもんだぞ?
「それで終わり?」
「後は帰りに佐々木に会ったんだが、その時にカカオを貰ったな」
 少し前に流行ったカカオ分の濃いチョコレートというやつである。何でも集中力が高まったり疲労が回復するとの事で佐々木は勉強の合間に食べているそうだ。そのお裾分けを頂いたという感じだな。
「あいつは向こうでも素直じゃないんだな…………そんなのでこいつが気付くもんか」
 何か言ったか?
「ううん、橘からは貰わなかったの?」
 さあ、出てもこなかったな。それにあいつが出てくれば警戒しかしないし何か貰うなんてありえない。
「うーん、それも可哀想なんだけど……」
 すまんな、こればかりはどうしようもない。お前の世界の橘と違ってこっちは絶賛抗争中なんだ。『機関』と『組織』の争いってだけでなく、あいつが朝比奈さんにやったことを俺はまだ許す気にはなっていないんだよ。
「分かったわ。でも一度こっちの橘には会って欲しいかもな、本当にいい奴なんだから」
 藤原さんもね、と言ったキョン子に免じて会ってもいいのかもしれない。キョン子にとって大事な友人なら俺も無碍にはしたくないからな。
「で、これで終わりよね?」
 そうだな、と言おうとしたところで思い出した。
「ああ、学校で鶴屋さんから貰ったな。あの人は不思議探索に参加する訳じゃないから」
「ふーん」
「それと阪中か、まああいつはハルヒ友チョコをやるついでみたいだったが」
「…………それで?」
「後は喜緑さんか。これもついでだろうな、あの人なりの」
「………………そう」
「他は古泉経由で森さんから、それと妹が預かったってミヨキチからかな? まあそんなとこだ」
 森さんの場合も付き合い上だろうしミヨキチも阪中同様友チョコついでじゃないだろうか。現に妹から貰ったチョコはミヨキチと一緒に作ったそうだ。
「へえ………………随分沢山もらってたんだね」
 家族をカウントしてるんだけどな。それにしても結構付き合いも多くなったものだ、ってキョン子が怖い! 何か背後から黒いモノが立ち昇ってるように見えるくらい怖い!
「あ、あの〜」
「何?」
「なんで怒ってらっしゃるんでしょうか、キョン子さん?」
「べっつに〜、怒ってなんか、ないわよ〜?」
 いや、顔が笑ってないんだって! 何だろう、背中から汗が噴き出してくるような。
「ねえ、キョン?」
「は、はい?」
「その、貰ったチョコってさー、所謂手作りってあった?」
 はて、手作りか。
「まあ妹とミヨキチは一緒に作ったらしいからな。それと阪中は母親と一緒に作ったそうだ。後はハルヒ達だろ、あいつらも一緒に作っただろうしな」
 女同士でお菓子作りというのも楽しいのだろう、そういうのもバレンタインなりの楽しみ方かもしれないな。
「だから全部ついでみたいなもんだろ」
 そう言うとキョン子が呆れたようにため息をついた。
「これだけの高確率でも分かってないんだから…………やれやれよね」
 意味はよく分からないが、酷い悪口を言われた気がする。
「つまりはお前は貰ったチョコは全部義理だろうって思ってるのね?」
 当たり前だろ、朝比奈さんから貰ったのは『義理』って書いてたし長門は『進呈』だったしハルヒに至っては『超! 義理』なんてホワイトチョコで書かれてたんだぞ?
 するとキョン子はもう一度ため息をついた。
「やれやれだ、敵ながら可哀想だけどまあ素直じゃない方も悪いのよね」
 そう言うと今度こそ本当に俺の前にチョコの入った箱を差し出した。
「あたしも手作りだから! 生まれて初めて作ったから美味しいかどうか自信は無いけどね! あ、藤原さんにもあげたけどそれは佐々木達と一緒に買ったやつだから!」
 いや、最後の情報はいらないと思うぞ。要は手作りチョコを貰えるのは俺だけだって言う事か?
「あ、当たり前じゃない! あたし、こういうイベントなんか興味なかったし今でもそんなに面白いかって思ってるけど!」
 それなら、とは言わせてもらえなかった。
「お前にだけは特別なんだからしょうがないじゃない! だからちゃんとあげるから貰ってよね!」
 見たことがないくらいに真っ赤な顔をしたポニーテールの女の子がそこにいた。俺だけの為に作ってくれたというチョコレートをその手に持って。
 俺だとは思えないほど回りくどさの欠片も無い、ストレートな物言いに俺が取った行動とは。
「はひゃ?!」
「ありがとな、キョン子
 こちらも素直に態度に示そう。抱きしめた彼女は思ったよりも小柄で細く柔らかかった。
「あ〜、う〜、は、反則だ……」
 そうか? それならお前のさっきのセリフこそが反則だ、あんな事を言われて喜ばない男など居るはずはないのだからな。
「…………ちゃんと食べて、次に会った時は感想ちょうだいよね」
「了解だ、ありがたく頂くからさ」
 抱きしめたから見えない顔。けれど表情は見なくても分かる。えへへって笑う顔はきっと赤くて。けれど幸せそうなのだろう。
 何故かって俺がそんな顔をしているに違いないからな。俺がそうなのだからキョン子もそうだ、と思う。
「ねえ……」
 キョン子が小さく囁いた。何が言いたいのか分かってしまう俺はそっとキョン子の両肩を持ったまま距離を開ける。
 キョン子は目を閉じていた。そして何かを待つように少しだけ突き出された唇。うわ、やばい。滅茶苦茶可愛い上にそこはかとなく色っぽい。
 しかし、その唇の誘いを俺は堪えねばならないのだ。
「…………いくじなし」
 じゃないんだよ。いいか、ここまで順調すぎるくらいにいい雰囲気だったがオチもまた見えてたんだよ。
「―――――ちぇ――――――」
「な?! な、な、な、いつからそこにいたの九曜ー?!」
 な? あまりに気配が無いから逆に疑わしかったんだ。九曜は俺とキョン子を見上げるようにすぐ傍でしゃがみこんでいたのだった。あのままキスしようとしたら九曜が出てきて大混乱ってオチだったに違いない。
「わっ!」
 俺とキョン子の間に九曜が入りこんできた。丁度俺が手を伸ばしてキョン子の両肩に置いているのでキョン子を遮るように九曜が立っているといった形に見えるだろう。
「――――こっそり―――こうしようかと――――――」
 で、このまま俺が目を閉じてキスしてしまう、と。なるほど、天然ステルスの九曜ならではの作戦だな。
「って、そんな事されたくないわーっ! 九曜、お前ずるいわよ! あ、あたしだって勇気を出して頑張ったのにー!」
 そりゃキョン子が怒るのも無理ないな。 
「何でお前は冷静なのよ?!」
 いや、九曜ならやりかねんと思っただけだ。こいつとも付き合いが長くなったものだから何となく読めたというか。
「うぅ……ほんとに無駄なくらいよく見てんだからぁ…………」
「だから――――鍵――――なの――――――」
「お前が言うなぁ!」
 はあ、流石九曜としか言い様が無いな。すっかり空気が変わってしまった。キョン子が九曜の肩を掴んで前後に揺すって九曜の頭がグラグラしているのを見ながら苦笑するしかない俺なのだった。







「むう〜…………」
 いい加減機嫌直せよ。ふくれっ面のキョン子に見送られながら九曜の手を繋いで元の世界に帰ろうとする俺なのだが、とにかくこれだと帰りづらい。
「――――やり―――すぎた――――?」
 ちょっとな。お前の行動に慣れた俺はともかくキョン子はこのキャラの九曜をあまり把握してなかったみたいだし。
「――――ノーコメント―――――」
 何がだ? キョン子の恨みがましい視線を無表情でかわす九曜。どうもこの二人なりの何かがあるようだが俺が追及するとやばい予感もひしひしと感じてしまう。
「あー、キョン子?」
「あによ」
 うわ、態度がハルヒだ。アヒル口になってないだけマシなのかよ?
「さっきのは九曜も悪いと思う、それは戻ってから九曜にも言っておくからさ。けど見送ってもらうのにそんな顔されるとこっちが辛い」
 せっかく楽しかった気分まで台無しになっちまう、それはお前だって望んでないだろ? 
「そうだけど……」
 それでもまだご機嫌斜めのご様子だ。やれやれ、俺ってこんなに融通効かない奴だったっけ?
「仕方ないな。九曜、ちょっと待ってろ」
 九曜から離れてキョン子の前に立つ。
「な、なに?」
 うるさい、我がまま娘め。
「目ぇ閉じてろ」
「え? ん〜っ?!」
 返事を聞く前に唇を塞いでやった。俺の唇で。因みにキョン子が目を閉じていたかどうかは不明だ、俺は目を閉じていたからな。
「―――おお――――」
 時間にすれば数秒といったところなのだろうが、唇を離したらキョン子がへたり込んでしまった。
「な、な、何すんのよ〜?!」
 真っ赤な顔で文句を言われても怖くも何ともないね。
「お望みどおりだろ? さあ、立てよ」
 手を差し出してキョン子を引っ張る。
「う〜……ばかぁ……」
 大人しく引かれたキョン子が俺の胸に倒れこんできたので支えてやる。そのまま顔を埋めてしまったので表情は見えないが耳まで真っ赤なので何となく分かってしまう。
「悪かったな、強引で」
「…………うん」
「だけどこうしたかったんだろ?」
「…………うん」
「だったら笑ってくれよ」
「…………うん」
「次はもう少しマシなようにするからさ」
「…………うん、ってええっ?! 次?!」
 お、ようやく顔を上げたか。はは、やっぱり真っ赤だな。
「お、お前があんなこと言うからだろっ?!」
 そうかい。
「だから笑って見送ってくれよ?」
「…………うん」
 ようやく離れてくれたキョン子に軽く手を振ると、
「待たせたな九曜」
「――――あなたは――――」
 うん?
「なかなか――――やる―――――?」
 まあこういう時にはな。
「――――鍵は――――あるべくして―――――鍵である―――――――」
 さあな、俺は単純に女の子に好かれたいだけかもしれないぞ?
「―――――かもね」
 おい、そこは否定しろよ! しかし九曜に無視された。何気に酷くないか、これ。
「―――では―――――そういうことで――――」
「ああ、頼んだよ九曜。キョン、またね」
 やっと落ち着いたキョン子の笑顔に見送られ、俺は九曜の手を繋いで目を閉じる。と、
「隙ありっ!」
 唇に感触があったかと思ったらキョン子の顔が目の前にあった。
「お前な……」
「やられっぱなしは性に合わないのよ、次はこんなもんじゃないからね!」
 だからお前は俺であってハルヒじゃないだろ?! 何だ、このキャラ設定。けれど、
「はいはい、じゃあまたな」
「またね」
「――――――いきまーす」
 笑ってくれてるからよしとするさ。珍しくちゃんと目を閉じた状態で俺は異世界から帰還する事が出来たしな。