『SS』 長門有希の複雑 6

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「若葉……ちゃん……?」
 突然現れた、一週間前から、ある意味期間限定でクラスメイトとなった女性に茫然と声をかけるハルヒ。そこには別段、今のことを邪魔されたことに対する憮然とした態度は微塵もなく、ただただ何が起こっているのか解らない、そういった様子だ。
「涼宮さん……? キョンくん……?」
 彼女も肩越しに振り返り、どこか愕然とした面持ちで呟いている。
「ここは……? どうして……気づいたら無意識にここに……」
 再び、彼女は視線を前方へと移す。そこにはもちろん、《神人》たちが新世界創造のための破壊活動を粛々と、というか豪快に進めているわけなのだが。
 ん? どうしたんだ? よく見れば彼女の全身が震えているじゃないか。
 そう言えば古泉曰く、若葉さんはこの閉鎖空間と《神人》に覚えがあるらしいから記憶の断片が戻ってきていても不思議はないのかもしれんが……
 そんな彼女の後姿を眺めていると、なぜだろう?
 一瞬彼女が一回り大きくなった錯覚を感じて、よく目を凝らしたらいつもの身体の大きさであることに気付きながらも、その大きくなった身体が透明になり、彼女に吸い込まれていったような……
 同時に脈打つ音が聞こえなかったか?
キョンくん……涼宮さん……」
 また呟いている。また何か脈打つような音が聞こえた気がした。
「闇が支配する封鎖フィールド……」
 ん……
「境界壁を破壊しようとする者……」
 とくん……
「世界の誕生……世界の崩壊……」
 どくん……
「私の記憶……ここに来る理由……」
 どくん!
 なんだ? やけに脈打つ音が大きくなってきてないか?
「わ、若葉ちゃん?」
 ハルヒが呼びかけるが若葉さんは反応しない。あたかも何かを確かめているように言葉を絞り出し続けるだけだ。
 …… …… ……
 何かを確かめる?
 いつの間にか《神人》の破壊活動の轟音すら、何かの脈打つ音に消されてしまっている。あたかも、《神人》たちと俺たち三人がまた切り離された世界にいるみたいだ。
 永遠のような刹那の沈黙。
 その沈黙を破ったのは――
「なるほどね」
 そう言った若葉さんの声は今までとは明らかに何かが違っていた。
「ここにキョンくんとハルヒさんがいるってことは、私は、どうやら多大な迷惑をかけたようね。なら今すぐ借りを返させてもらうわ」
 振り返った若葉さんの表情には、どこか勝気満面で不敵な笑顔が浮かんでいる。
 って、『ハルヒさん』? ついさっきまで『涼宮さん』と言ってなかったか?
 ということはまさか!
「別の並行世界のキョンくんは私に彼女の名前をそう教えてくれた。だから私は教えられた通りに呼ぶ。この意味解るわよね?」
「き、記憶が戻った……って、ことですか……?」
 俺もタメ口から丁寧語にシフトチェンジだ。なぜなら彼女は年上の人だしな。失礼があってはいかん。
「その通りよ」
 言って、彼女が踵を返す。その眼前には《神人》が……ええっと……五体だろうか。
「あなたじゃないキョンくんだけど、そのキョンくんは私たちの世界を救ってくれた。だから今度は私があなたたちを救う、、、、、、、、番」
 はい?
「そして、キョンくんはこの世界を消失させる方法を知っていて、それを私に教えてくれた。と言ってもまあ、彼はそんなつもりなくて話の流れで言っただけなのだろうけど、まさかこんな所でそんな知識が役に立つとわね。でも次に使うことはさすがにないかな?」
 後ろ姿からでも茶目っ気な笑顔を浮かべていることが充分想像できる声だな、おい。
 見れば《神人》たちが俺たちに迫ってくる。つっても図体は大きいがえらく緩慢な動きだ。
 ん? 彼女が何か呟いている。何だ? それも少し頭を垂れて、両腕を目の前で十文字に構えて……
「え……!?」
 ハルヒの戸惑う声も聞こえた。
 そりゃそうだ。彼女の呟き続けると同時に彼女の全身から何か正体不明のウネリが立ち上ったんだ。例えるなら原色オーラってやつか?
 しかもそのオーラはどんどん大きさとうねりを増していく。彼女の制服と頭髪が風もないのに揺らめいているんだ。
 この現象は……まさか……!
 俺が達した予想を裏付けるがごとく、


「スターダストエクスプロージョン!」


 両手を開き、両腕を突き出して記憶を取り戻した魔法使いが吠えた刹那、放たれる――そう! これはもうこう表現するしかない! 銀河を猛スピードで疾走して次々を惑星を砕いていく錯覚すら起こす流星が《神人》五体を一気に吹き飛ばしたんだ!
 端的、かどうかは知らんがもうちょっと解りやすく言うなら、星座をモチーフにしたプロテクターを纏って戦う少年たちを描いたバトル漫画に出ていたペガサスの得意技がジェミニの必殺技の演出風景と重なった、そんな感じだ! これでも情景が想像できない時はスマン!
 って、これが攻撃魔法ってやつか!? 確かに彼女は自分は魔法使いだと言っていたが、まさかこれほど凄いとは思わなかった!
「行くわよ!」
 って、え!?
 《神人》の殲滅を確認して、彼女は俺とハルヒの手を取った。
 刹那、光が俺たちの周りを猛スピードで円を描いて疾走を開始した!?
「あなたたちは自分の在るべき世界を思い浮かべて! その思考は私にテレパシーを通じて届く! あなたたちの思考を媒体にしてその世界にテレポートする! 複数人数での異世界間移動は、一人だと本来はできないんだけど、この世界はまだ元の世界との連結が断たれていない! だって遺伝子情報が流れ込んでいるから! それを通じて脱出が可能なの!」
 なんだって?
「ど、どういうこと!? というか、あんた超能力者!?」
「チョウノウリョクシャ?」
「だって、さっきと今の現象とかテレパシーとかテレポートとか言ったじゃない! 冗談じゃないなら、あんたは『超能力者』だって話よ!」
 ハルヒが手を掴まれたまま、言い募っている。
「その質問に今は答えられないわ。だって、私は『チョウノウリョクシャ』という言葉を知らないから。それと時間もないの。また、あの巨人たちが出てくる前にこの空間から脱出しないといけないのよ」
「どうしてよ!?」
「元の世界に戻ったら教えてあげる! だから今は何も言わずにあなたたちが元々いた、在るべき世界のことを考えて!」
「むぅ! 絶対だからね!」
 どういうことだ? この人がどこか焦っている。まるで一秒でも早くこの世界から逃げ出したい、そう言っているようにさえ聞こえる。
 そんな彼女の様子にハルヒも気付いたのだろう。
 不承不承ではあるが、『戻ったら教える』と言った若葉さんの言葉にハルヒも納得したようだ。
 そして――


「テレポテーション!」


 彼女が再び吼える声が聞こえたと思ったら、俺は自分の体が今、発生した光に溶け込んでいくような錯覚を覚えて――
 気が付いたら、そこには俺を覗きこんでいる三つの顔があった。
 一つは青いストレートロングヘアのクラスメイト、一つは軽くウェーブのかかった緑の髪の先輩、一つはグレーアッシュショートヘアの団活仲間。
 内、二人は優しげな微笑みを浮かべていたし、もう一人は無表情に見えて、しかし俺には解る、明らかに安堵の表情を浮かべていた。
 ここは――長門の部屋か?
 俺が弾かれたように上半身だけを起こしたところで、
「そういうこと。悪いけど移動させてもらったわ。その分、あなたの意識が戻るのにちょっと時間がかかっちゃったけど」
 説明してくれたのは朝倉だ。相変わらずの黄色いチューリップ笑顔。この表情は、俺以外は誰も知らない十二月十九日の夜、有希のことを心配していながら、それでいて俺と有希のことを応援しようと勇気づけてくれたときのものだ。
 ……って、あれ?
 ちょっと待て。ここにいるべき人物がいないじゃないか。
 いくら小さくなっていると言っても、俺は目を覚ましたらそいつの顔が一番アップで映し出されていて、その三人の顔に気づくことはなかったはずなのだが……
「彼女でしたら、そこですよ」
 俺がキョロキョロした瞬間、喜緑さんは温かいものを見る瞳で俺を見ながら、とある部分を指差した。
 どこかと言えば俺の胸元だ。
「……」
 有希がそこにいた。しかし、いつもと違い、俺のシャツを力いっぱい握って胸に顔をうずめた姿で、だ。しかも震えている。
「あなたがこちらに戻ってきてすぐ、彼女はあなたに飛び込んだのです。怖かったのでしょう。あなたと自分という世界でもっとも大切なものを二つ同時に失うかもしれなかったのですから。その緊張が解けて感極まった、とでも言いましょうか」
 そうか……そうだったよな……だが安心しろ。俺は戻ってきた。
 いまだ、俺の胸に顔を埋めている恋人を左手で包み込み、右手で髪をそっとなでる。ショートカットだけどそのさらさらした頭髪の触感が何とも懐かしい気分だ。
「そう……」
 有希の声が嗚咽で震えている。正直言って、初めて聞いたな。本当に有希は人間らしくなっていっている。
 もしかして有希が元の大きさに戻るのは、本当に完全な人間になった時なのだろうか、などとふと考えてもみたが、ヒューマノイドインターフェイスだろうと人間だろうと関係ない。有希は有希さ。俺にとってはそのことが一番重要だ。
「あなたに聞きたいことがある」
 この質問は有希じゃない長門の方だ。今の有希はとてもじゃないが声を出せる状況にないからな。
「なんだ?」
「どうやって、この世界に回帰できたの?」
 そうか。そう言えばこの長門は、有希の思考をトレースした存在だったな。なら、あの空間から俺が戻ってくる方法を知っていても不思議はない。
 ついでに言えば、なんとなく言葉自体は穏やかだったが、少し低い口調だった。有希も一瞬、ビクッとしたようだし。
 もっとも俺には何も後ろめたいことはない。
「あの人が俺とハルヒを通常空間に連れ出してくれた。確か、『テレポテーション』だったかな? おかげで有希を傷つけずに済んだ。だから安心しろ」
 俺は苦笑を浮かべて答える。もちろん、有希たちも『あの人』が誰を指すかは分かっていることだろう。
 今の回答は長門に、というよりも有希に、と言った方が正しいかもしれん。
「って、ちょっとキョンくん! それだとすぐまた涼宮さんが閉鎖空間を創出してしまうんじゃないの!?」
「確かに。かの空間において、涼宮ハルヒがこちらの世界に回帰するためには、涼宮ハルヒの意識をこちらの世界に強く向けさせるか抹消させるかしか、なかったはず」
 俺の答えを聞いて朝倉が焦ったような声を上げ、長門もまた追随してきた。
 しかし、はっきり言っておこう。それは杞憂に過ぎないと。
「心配いらん。ハルヒも元々こっちの世界に戻るつもりでいた。それは断言していいぜ。だから今回は連れ出してくれる人がいればそれで良かったって話だ。俺とハルヒだけじゃどうやって戻ればいいか分からんことはないが、その他の方法となると知らんからな」
「……そう」
 とと、やっと顔を上げたな有希。って、お前、目が真っ赤じゃないか。
「だって……」
 分かってるって。こんなに心配してくれる彼女がいる俺は幸せ者なのさ。
 しばし見つめあう二人。そこに言葉はなくてもお互いがお互いのことを理解している二人だけの空気が流れている。
 なんか周りから「やれやれ」なんて雰囲気が漂っている気もしたがどうでもいいだろう。


「おっと、お邪魔だった?」


 で、さすがは今回の話を作った作者が創造しただけあって、この空気を全く読まない御方が登場したのは、やっぱりいきなり発生した光の中からだったのである。
 現実的には今、俺たちが何をやっているのか分からんかった所為なのだろうけど、これは間違いなく今回の作者の陰謀だ。
 つっても、俺も有希もこの人には感謝の心しかないから腹は立たないがな。例え今の雰囲気のままであれば間違いなく、俺と有希がキスしていたであろうとしてもだ。
「ありがとうございました」
 当然、俺は笑顔で彼女に声をかける。
「お互いさまでしょ。キョンくんは私の記憶を戻してくれたんだから」
 茶目っ気たっぷりの笑顔を浮かべる彼女。ちなみになぜ俺が代名詞を使っているかというと、この人が記憶を取り戻したからだ。もう『若葉さん』じゃない。
「私もお礼を言いに来たのよ。記憶を戻してくれてありがとう、って」
 ……てことは、これでお別れなんですね?
「まあね。私も向こうでやることがたくさんあるし、特別な用事がない以上、いつまでもここにいられないから。それでさ、お礼ともう一つ、お別れの前に言っておきたいことがあったのよ」
 もう一つ?
「うん」
 頷いて、彼女が一度、瞳を伏せてしばし沈黙。


あお


 え?
そうてんあおわかあお
 それはどういう……
「私の名前。また再会できるかどうかは分かんないけど、これでこの世界のキョンくんと長門さんに会ったのは三度目だし、二回目までなら偶然でも三回目は偶然でなくなるの。だから教えた」
 彼女のニコニコ笑顔は崩れそうにないんですけど……って、あなたの名前!?
「ま、忘れちゃってもいいけどね。毎回言ってるから説得力はないかも知んないけど、次、再会できる保証なんてどこにもないし」
 いやいやいや! 俺と有希は絶対に忘れませんよ! だって、あなたは――!
「じゃあね」
 などと俺が言葉を紡ごうとした瞬間、しかし、蒼葉さんはいつぞやの朝倉のような笑顔を浮かべて、光の粒子とともに消滅したのである。
 しばし彼女の痕跡に黄昏ていたのだが、
「お礼……言いそびれた……」
「だな」
 有希が静かに呟き、俺もまた静かに首肯する。有希の言ったお礼ってのが俺をこっちの世界に戻してくれたことに対してじゃないからさ。
 じゃあ何かって? んなの決まってんだろ。
 もっとも今回は違うぜ。なんせ、あの人が言ったんだ。
 二度目までなら偶然だけど、三度目は偶然じゃない、と。
 だから、
「今度、会ったときに言えばいいさ」
「了解」
 俺たちはそう言って笑い合う。
 そうさ。有希は蒼葉さんの住む世界への行き方を知っているんだ。んで、前回までとは違う。もう偶然じゃなくなった以上、必ず、またあの人に会えるだろうよ。
 その時までに俺たちは、お礼の言葉をたくさん用意しておかないとな。なんせ、あの人が登場するたびに俺と有希は俺たち二人にとって、とんでもなくお世話になってしまっている。
 一回目は、本当の有希と一つになれたこと。
 二回目は、有希を俺の元へと帰してくれたこと。
 そして、今回の三回目は俺も有希も言葉じゃ言い表せないくらい世話になった。
 絶対にお礼を言いに行かなきゃならないだろうぜ。おそらく、蒼葉さんはもう、こっちの世界に意識しては来ないだろうからな。というか、今回も意識して来た、、わけじゃない。確率論で説明し切れない偶然が重なってこっちの世界に現れた、、、んだ。
 ついでにあの人は別段、こっちの世界に用があるわけじゃない。用もないのに異世界に行って、それで元の世界に戻れない事態を招くのは蒼葉さんじゃなくても避けたいって考えるさ。それだけ異世界ってのは想像を絶するくらい広大って意味だ。本人がそう言ってたしな。
 というか狙った異世界に行けるってのもなかなか簡単な話じゃないってことは、蒼葉さんはもちろん、有希も認識しているんだ。
 だから俺たちから会いに行かなくちゃならない。もし、有希のことをハルヒに話すことができるならSOS団全員プラス名誉顧問さんで行っても構わんかもしれん。
「同感」
「だろ?」
「でも、今は無理」
「分かってるさ。お前のことを今はまだ、ハルヒに説明できないんだ」
「そう。しかし、いずれは話す時が来る。いや話さなければならない」
「もちろんだ。でも、みんなで行くときのことを想像するくらいいいだろ?」
「いい」
 ふふっ。ハルヒの喜ぶ顔、古泉の興味深々の顔、朝比奈さんの驚く顔、鶴屋さんのハイテンションな顔が今から楽しみだ。
「そして、喜緑江美里朝倉涼子長門有希も一緒に行く」
「あらあら」
「いいの? 有希ちゃん」
「わたしも?」
 俺と有希が会話の流れで宇宙人三姉妹の名前を出した途端、三人とも食いついてきた。
「いい」
「当然だろ」
 振り返り、当たり前のように呟く有希と俺。
「旅行は大勢で行く方が楽しいから」
 有希が呟くと、この部屋の暖かさが、さらに穏やかさを増したのは気のせいではないだろう。
「それにしても彼女も人が悪い」
 ん? 蒼葉さんのことか? どういう意味だ?
 有希が静かに俺へと視線を移す。そこには珍しく、何かを面白がっているような小さな微笑を浮かべていた。
「彼女は自分が記憶を失っている間のことを覚えている。だから御礼に来たものと思われる」
 なんだって?
「なぜなら彼女は、自分の名を告げるとき、『若葉の葉』と言った。『葉』の説明であれば総称である『葉っぱ』でよかったはずだし、『言葉』の『葉』でも問題ない。しかし、彼女はわざと、ほぼ固有名詞に近い『若葉』と言った。『若葉』とはあなたが彼女の呼称としたもの。もし、記憶喪失中のことを覚えていないとするならば、『若葉』という説明をする可能性は低い」
 あ……!
「それはすなわち、『今度はそっちからこっちに来るように』という意思表示。名目は『お礼を言いたかったら会いに来なさい』ということ」
 なるほど。俺たちは誘われているってわけか。
 異世界からの招待とはね。マジでハルヒが大喜びしそうだ。
「そしてこれは、わたしたちにとっても好都合。わたしたちのことを涼宮ハルヒに話したとしても不測の事態を回避できる手段になる」
 交換条件、か……俺たちのことを許容してもらうのと引き換えに異世界トラベルを提供するってことかよ。
涼宮ハルヒがあなたを失う以上、あなたはそれ相応の彼女の望みを叶える責務がある。涼宮ハルヒの望みは、あなた以外のことであれば、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者に出会うこと」
「いいのか? ハルヒ異世界を認識してしまっても」
「問題ない。涼宮ハルヒの力が作用するのは、あくまでこの世界。その力が異世界まで及ばないことは彼女のおかげで証明されている。もし、涼宮ハルヒの力が異世界にまで及ぶとすれば、わたしたちはすでに涼宮ハルヒによって異世界に踏み込んでしまっているはず」
 なるほどな。
 有希の説明を聞いて、俺は納得し、喜緑さん、朝倉、長門の様子を見ると、どうやらその見解は間違っていないようである。別段、反対されなかったしな。
 よし、ならその日が来たらみんなで行こう。
 そんなに遠い未来のことでもないだろう。うまくいけば卒業旅行にできるかもな。もし、そうなるなら喜緑さんと朝比奈さんと鶴屋さんは卒業旅行をそれまで取っておいてもらうとしよう。有希とのハネムーンでもいいかもしれん。
「そう」
 俺の提案に、有希が首肯して、宇宙人三姉妹も了承してくれたのだった。