『SS』 三年Z組 キョン八先生 3
前回はこっちだって言ってんだよォォォォォォォッッッッ!!!!
といったやり取りを経たところで場面は再び三年Z組へと戻ってくる。
「と、言った訳でお前ら絵を描け」
キョン八が先程までの校長室でのやり取りを掻い摘んで述べてからダルそうにしていると、
「いや、それだけで絵を描けって言われても私達の誰かが金賞なんて取れると思えないんですけど。誰か絵について詳しい人とかいないんですか? もしくは何か秘策でもあるの?」
きちんと状況を説明しながらも不安を煽るのが朝倉である。見事なまでにぱっつぁんのポジションを演じるのは元々世話好きだから仕方がないのかもしれないが。
キョン八は頭を掻きながら、
「あ〜、何とかなるんじゃね? 最悪長門かお前が宇宙的な能力とか使って漫画家の誰かの絵をトレースするとか」
「うをい! それ反則すぎんだろーが! つか涼宮さんも居る前で言っちゃらめぇ!」
しかしその時、涼宮ハルヒは食後のシエスタを楽しんでいたのであった。ダイジョウブ、バレテナイヨ? ということで、
「まあ形だけでも数を揃えないといけないから描いてもらうしかないんだがな。おい、ハルヒ! お前も起きろ!」
「ん〜? もっと幼馴染が朝一番で優しく起こしてくれるみたいな言い方じゃないと起きないアルよ………」
「べ、別にお隣だし遅刻したら困るからしょうがなく起こしてあげてるんだからねっ! ほら、早くしないと朝ごはん食べれないでしょ? お味噌汁作ってあげてるからちゃんと食べて行きなさいよねっ!」
「何そのテンプレなツンデレ?! しかも妙にいい声で!」
流石にハルヒも起きざるを得なかったのだがキョン八は何事も無かったかのように、
「んじゃまあ画材とかは適当に調達してきたんで後は好きなように描けよ。俺は今から四つ目のバッジをゲットしてくるからな、お前らだけには苦労はさせないぜ」
つまりはDSのスイッチを入れたのであった。キョン八の旅はまだまだ続く!
「いや、続けちゃダメでしょ! 一応教師なんだから監督責任ってもんがあるでしょ?」
朝倉涼子はやはり真面目な委員長キャラだったのだ。伊達に眉毛が太くはないのだ。そして眉毛の言うことこそ正しいのでキョン八は仕方なく、
「分かった、俺は今から腹痛で保健室に行くが気にせず芸術に勤しんでくれ。後は任せたぞ、朝倉」
「行かせるかーっ! 完全にサボる気じゃない、しかも任されてもどうしようもないメンバーしかいないじゃない! いくら私でもうん、それ無理、なんて言えるレベルじゃないわよ! つーか、置いてかないでェェェェェェッッッ!!」
最早形振り構わずキョン八の腰にしがみつく哀れなる構成上の犠牲者、朝倉。しかしキョンならともかく相手はキョン八である。構わずに引きずるどころか、
「うっせー! 俺ァ保健室のベッドで優雅にポケモンがしてぇんだよ! つか出番増えたんだから働け眉毛!」
「いやだーっ! こんなことなら再構成なんかされるんじゃなかったーっ! あとやっぱ眉毛って言われたーっ!!」
阿鼻叫喚の地獄絵図である。それを止めたのは、
「へぶしっ!」
「……………」
朝倉の延髄に致命傷になりかねない一撃を入れたのは同じく宇宙人製ヒューマノイドインターフェースこと長門有希だったのだ。
「先生に危害を加えることは許さない」
基本的に長門さんはキョン八以外には厳しいのであった。いや、決して朝倉だからではない。だが、流石に目の前で殺人ギリギリの破壊力を見せ付けられたキョン八も引いていた。
「あ、ああ、すまんな長門」
「いい。そんな事よりもあなたはもっとわたしに危害を加えるといい」
「はあ?」
やはり長門さんは電波であった。むしろ朝倉の方がマシだったことにキョン八はやっと気付いたのだ。
「保健室に行くのなら幸い。わたしは医療系器具を使ったプレイも対応できる、許可を」
そう言いながら何処からともなく取り出す数々の器具。
「これは?」
「イチジク浣腸」
「だよな。んで、これは?」
「グリセリン溶液。挿入用ポンプも既に準備済み」
「いや、いらないから。えーと、このゴムみたいなのは何だ?」
「尿道用カテーテル」
「全部スカトロ専門じゃねえかァァァッッ!! お前どんだけアブノーマルなプレイ希望なんだよ! ていうかインターなんとかに排泄機能があるのかよ?!!」
えーと、長門ファンの方すいません。とりあえず長門有希は無表情(キョン八には自慢げに見える)で、
「大丈夫、中身は綺麗な水だから」
「どこのメイドロボットだ、てめえェェェェェェェ!!!」
分かった、一番危ないのはこいつだ。今保健室などに行けば色々な意味で危ない。間違いなく朝倉では無い誰かに刺されかねないのだ。ほんと長門ファンの皆様すいません。
キョン八は青ざめた顔で、
「い、いや〜、ほら、僕一応担任じゃないですか? だから責任持ってクラスを見てあげないといけないから、保健室はまた今度にしよーかなーって、ねえ?」
「…………そう」
あぶねえ、まさに危機一髪だった。キョン八が胸を撫で下ろそうとした時だった。
「ならば此処で一発」
長門がスカートの中に手を!
「やめんかコラァァァァァァァ!!!」
慌ててキョン八はスカートに手を突っ込んだ長門を抱えてロッカーへと放り込んだ。そして鬼の形相で、
「いいかテメエら! 今からスグ描け! 死ぬ気で描け! そうじゃないとまた長門が出てきちまう! そしたらこの作品は永久にお蔵入りの危険性が大きいんだよ! やべえよ、長門こえーよ、あれが噂のヤンデレってやつなのか?!」
最早錯乱状態のキョン八である。生徒達も異常事態なのは分かっているので黙って頷いた。恐るべし長門有希である。ここでキョン八は大きく深呼吸を繰り返し、落ち着いた表情でこう言ったのだった。
「と、言った訳でお前ら絵を描け」
『無かった事にするつもりだー!』
全員そう思ったけど先程の惨状を見ればそれでいいやとなる訳で。つまり朝倉は気絶し、長門はロッカーに封印された状態で最初からやり直しと相成ったのである。何というか予期しない行数稼ぎに遭ってしまい、作者もキョン八も長門有希にだけは気をつけようと心から思うのであった。