『SS』 おとうさん:Dialogue

「ねえ、おとうさ………………あっ!」
「誰が父さんだ」
「ちょっ! 忘れなさい! ただちに記憶中枢の全てからさっきのあたしを消去しろっ!」
「危なっ! いきなり殴りかかってくるな!」
「まあまあ涼宮さん、キョンくんは何も悪くないじゃないですか」
「うう………………不覚だったわ…………なんでキョンなんかをお父さんなんて言おうとしちゃったのかしら…………」
ファザコンだからじゃねえか?」
「そんなことあるかーっ!」
キョンくんもからかわないで。あたしもたまにですけど先生にお母さんって言いそうになっちゃうことありますよ?」
「懐かしいですね、僕も幼い頃は無意識に先生をお母さんって呼んだことがありますよ」
「まあ確かにそういうこともあるな、あれは恥かしい」
「ですねえ」
「だがこの年齢でしかも何故俺なのかというのはあるがな」
「だから忘れなさいって!」
「え? 最近でも結構あるんじゃ…………」
「いえ、朝比奈さんなら許されるかと。むしろ呼ばれたいかと」
「何よ、その差は?」
「どちらにしろまだ俺は父さんと呼ばれる年じゃない」
「ふふっ、それだけ涼宮さんはあなたに対して安心感を持っているということじゃないですか?」
「は? 何言ってるの古泉くん! べ、別にあたしはそんな………」
「確かにキョンくんはお父さんって感じありますよね」
「朝比奈さんまで……………嬉しいような、老けてるって言われてるみたいで複雑な気分だな」
「まあいいじゃないですか、それだけの信用を涼宮さんから得ていると思えば」
「だからそういうんじゃないって……………」
「そこで妙に照れるな、余計に誤解されるだろうが」
「涼宮さん可愛いです〜」
「………………………………」
「どうした長門? 今まで何も話さなかったから興味が無いと思ってたんだが」
「……………おとうさん」
「なに? 有希まであたしをからかうわけ?!」
「違う。わたしが彼をそう呼称するのは正確に彼の現状を認識した結果、一番最適な呼称を用いたに過ぎない」
「はあ? いきなり何なんだよ、長門?」
「……………おかあさん。わたしはそのように呼ばれたい」
「へ?」
「な、長門さん?」
「有希、どうしたの一体………」
「おとうさん、現在のわたしたちの体調は順調。ちゃんと成長している」
「あ、あの〜、長門さん? 何故そのように愛しげにお腹をさすっていらっしゃるのでしょうか?」
「え、え〜と…………………ふわああああ?! な、長門さんがおかあさんにーっ?!」
「朝比奈さん落ち着いて! いや、俺も落ち着け! というか長門?!」
「…………………なに、おとうさん?」
「いやだから身に覚えが無いっ! というかあったら怖い!」
「大丈夫、あの夜の事は忘れない」
「だからいつの夜なんだーっ!」
「……………………認知して?」
「出来るかーっ!!」
「ふっふっふ……………そうなんだ…………有希がおかあさんでキョンがおとうさんで…………あたしが知らないとこで何してくれてやがってんだ、こいつら………」
「はっ! 携帯が?!」
「落ち着けハルヒ! 長門もいい加減冗談はやめろ!」
「そう」
「そうだ、ほらハルヒにちゃんと謝れ」
「…………パパの方が良かった?」
「フーン………………」











「あ、世界が」
「あ、あたし何もしてないのに〜っ!?」