『SS』 遅くなった夜には

 それは些細な事だった。何となくコンビニに行こうと思ったのは家に帰ってしばらく経ってからであり、すっかり暮れかけて街灯の灯りが道を照らす中を適当に買ったジュースとスナック菓子を持って帰宅する途中の事である。
 帰ってから何をするという訳でもなく、ただ時間を立ち読みで潰すのも不本意だったのだったからなのだが、
「あ、キョンくん。こんばんは」
 などと意外な人物に呼び止められるとは思いもしなかった訳である。声そのものは聞き慣れているのだが、こんなところで聞くとは思わなかったので思わず足が止まってしまった。
「おう、阪中か。どうしたんだ、こんなところで?」
 声の主は俺達のクラスメイトであり、SOS団に依頼をしてくるなどという勇気ある行動を通じてハルヒと友人関係を築きつつあるという実はお嬢様な阪中だった。とはいえ依頼そのものは長門が活躍してしまうような宇宙的な何かだったのだから、これはハルヒが望んだ必然というものだったのかもしれない。
 その阪中はリードを持っているところから分かるとおり、どうやら散歩の途中であるようだ。ということはリードの先には、
「ルソーも久しぶりだな、元気にしてたか?」
 飼い主からの愛情を一心に注がれている宇宙生物に寄生された経験を持つ愛くるしい小型犬は、俺に向かっても愛想よく尻尾を振ってくれた。ついしゃがんでルソーの頭を撫でてやる。愛想の良さも変わらないようで何よりだ。
「散歩か? ご苦労さんだな」
「ううん、毎日の事だしルソーとお散歩するのは楽しいから」
 そういうもんかね、ウチのペットは自由に出入り出来るにも関わらず家から出て行こうとしないのだが。と、ここでふと気が付いた。
「そういや、こんなとこでどうしたんだ? ルソーの散歩コースにしちゃ離れすぎてると思うんだが」
 確かルソーは決まった散歩コースしか歩かないはずだ、だからこそ事件に気付いた阪中がSOS団に依頼をしてきたはずだよな? にも関わらず、ここは阪中の家からは大分離れていると言わざるを得ない。
 俺は普通に訊いただけだよな? それなのに阪中は少し慌てて、
「え? あ、あのね? ほら、ルソーも最近運動不足なんじゃないかって、お母さんが言ったのね。だからお散歩のコースを少しだけ長くしてみようかなって…………」
 少しって距離でもないような気もするが、確かに阪中家はこの小さな住人に対して過保護気味なのは感じていたので、
「そうか、だがもう結構遅いから気をつけて帰れよ。なんだったら送っていこうか?」
 ハルヒも随分とルソーを気にいっているし、何より夜道を女の子一人で帰らせるのも心配だしな。人懐っこい小さなルソーじゃ用心棒としては些か心もとないものだ、俺としては親切心で言ったつもりだったのだが。
「あ、うん。嬉しいんだけど家に男の子と二人で帰るのも………」
 と、俺の方が不審人物扱いされるのかよ。まあペットにもあれだけ過保護なのだから一人娘にはそれこそ目に入れても痛くないってとこだろうしな。だが、
「家までじゃなくていいさ、途中までならいいだろ」
 そう言われてもこっちも気分が落ち着かなくなるしな。俺は基本的にフェミニストでありたいと思う男なのだよ。
「あ、ありがとう、キョンくん。やっぱりちょっと歩きすぎたかなって思ってたのね」
 だろうな、阪中自身はハルヒに付き合える程の体力と運動能力があるから平気だったのだろう。だが普段は決まった散歩コースしか歩かないルソー氏には些か荷が重かったのではないだろうか。口を大きく開けて舌を出しているのは愛嬌ではなくて体温調整なんだよな。
「なんだったらルソーを持とうか?」
「あ、うん。ごめんなさい、キョンくん」
 いいってこった、ハルヒもお気に入りのルソー氏に何かあったらこっちが被害を被りそうだしな。俺がルソーを抱えると、疲れていたこともあってか大人しく腕の中に納まってくれた。多少暑いが、まあ何とかなるだろう。
「そんじゃ行くか」
 一応土地勘もあるしな、さっさと阪中を送ってから帰って漫画でも読むことにしよう。
「うん、ありがとね」
 まあ阪中とこうして話す機会というのもありそうで無かった事だ。たまにはいいのかもしれないな、などと思いながら阪中にSOS団の活動(ほとんど何もしてないが)などを話しながら夜道を歩く俺なのだった。


「あ、この辺りで大丈夫だから」
 結局阪中に付き合って俺がルソーを降ろしたのはほとんど阪中の家の近所だった。まあ玄関先まで行かなかっただけ、というくらいの距離である。最終的に親に見つからなければいいってとこなのかね? まあ途中で別れて余計な気を回すよりはいいのだが。
「ごめんね、本当なら家に寄って貰いたいくらいなんだけど」
「いいさ、また明日学校でな」
 本当に済まなさそうに頭を下げる阪中に適当に笑って応え、俺はここまで大人しかったルソーを手渡した。本当にぬいぐるみのようになっているルソー氏は既に半分夢の中のようで、阪中の腕にすっぽりと納まってしまった。こいつは本当に番犬には向いてないな。
「ルソーもお休みのようだしな、早いとこ帰ってやれよ」
 ルソーの様子が面白かったので思わず笑ってしまいながら、阪中に軽く手を振って俺は家路を急ぐ事にした。流石にコンビニに寄っていたというには時間がかかりすぎてたからな。
「ありがとー、また明日ねー」
 ルソーを片腕に抱えたまま阪中は手を振ってくれたのだが、それだけ大声を上げたら何の為に家まで行かなかったのか分からないぞ? だが妙に阪中らしいな、と思ってしまい、俺はまた笑って帰ったのであった。
「えへへ……………キョンくんとお話出来ちゃった…………」
 小さな阪中の呟きなど勿論聞こえちゃいなかったしな。
 とりあえずはコンビニに寄り直してコーヒーでも買うか、そう思って立ち寄ったコンビニでつい立ち読みをしてしまい、結局親から大目玉を食らったのは自業自得というものだろう。


 



 それからというもの、夜に時々ふらっと外に出ると、
「あ、こんばんは。今日はどこ行くの?」
 とまあ阪中に会う機会が増えていた。どうやらルソーの散歩コースは俺の家の近所で決定したらしい。ルソーもご苦労な事だ、自分のダイエットの為とは言え同情したくもなってくる。という事で帰りは俺がルソーを抱えて送ってやるパターンが定着しつつあるのだった。
 そうすると自然と阪中と話す事が多くなっていく訳で、最近は阪中の家の手前まで歩くのも苦にならなくなっている。阪中はやはりお嬢様らしくどこかズレたところがあるものの、女子高生らしい話題には敏感でどこか世間とは違うSOS団の女性陣とは違う面白さがある。何より俺自身が流行に疎いところがあるので助かっている面もあるな、少しは周囲の話題にも付いていっておきたいんだよ。
 俺としても阪中と話すのが楽しくなってきているのだろう、気付けばほぼ毎晩のように阪中を送っているような気がする。まあ阪中からしてもルソーの散歩の途中で偶然会って暇つぶしに話が出来るのだからいいのだろう。
「いつもごめんね、迷惑じゃないかな?」
 毎度訊かれるのだが迷惑なら断わっているはずなのだがね?
「まあ適度な運動みたいなもんだから帰ってゆっくり寝れるよ、あんまり気にすんな」
「あ、うん! 私もキョンくんとお話できて嬉しいのね」
 そう言ってもらえるならいいさ。ルソーも大人しく懐いてくれるからな、そんなに散歩ってのも悪くない。
「ねえ、ちょっと待ってもらえるかな?」
 阪中がルソーを抱えて走って家へと戻る。というか、そろそろ玄関まで行かない意味が無くなってないか、これ? いくら何でもこれだけ家の近くで阪中が楽しそうに話をしていたら誰かと一緒だと気が付くもんだろ。それに静かで閑静な住宅街だから誰かが見ていて阪中の親に言ってもおかしくないだろうしな。
 そう考えればもう少し手前で別れておくべきだったのかと思いもするが、阪中が何も言わないのでなし崩しにこうして待ってしまっているのだが。
「お待たせー! はい、これおみやげなのね」
 阪中が手に持っていたのは小さな紙包みである。受け取って覗いてみると、阪中の母親自慢のシュークリームが入っていた。
「いいのか? これじゃお前が一人で散歩してたんじゃないって丸分かりだと思うんだが」
「ちゃんとお友達がいるって言ってるから大丈夫だよ。本当は家に呼んだほうがいいんだけど………」
 まあいくら友達でも男一人をいきなり家に入れるようなもんでもないだろうな。
「サンキューな、妹も喜んでくれるだろ」
 阪中母お手製のシュークリームをSOS団の用事以外で食べられる機会なんかそうはないだろうしな、最近は夜出かけてしまうのでご機嫌が斜め気味だった妹もこれで宥められるだろう。
「そんじゃまた明日な」
「うん、気をつけて帰ってね」
 何だか散歩が当然になってきていると思いつつも、俺は家へと戻る。俺も帰ってからシュークリームのご相伴には預かりたいのだが妹に独占されないようにしないとな。
 などと思っていた俺は、この後シュークリームを何度ももらえるほど散歩に付き合うだなんて思ってもいなかったし、
「…………今度はちゃんとお家に呼ばないとね、うん」
 と頷く阪中など見てもいなかったのだった。とりあえずは満足できるくらい楽しませてもらっているんだしな。






 さて、こうなるといつもの学校でも阪中と話す機会が自然と増えてくるというか、挨拶くらいは普通に交わすようになる訳だ。
「あ、おはようキョンくん」
「おう、おはよう」
 程度のもんだけどな。それでも気軽に会話出来る相手が増えるのはいいことだ。
「なんだ? 最近は涼宮じゃなくて阪中目当てか? まあそんなに悪くはないと思うけど、お前はいつも高め狙いだな」
 などというアホらしい外野の声はおいといて。
「阪中はSOS団のお客さんだ、ハルヒに聞こえたら何言われるか分からんぞ?」
「だとしてもよー、なんでお前にばっか美人とか可愛い子が寄って来るのか分からんぜ」
 それならお前もSOS団に入ればいいじゃねえか、ハルヒが許すかはさておき。
「それは断わる。いくらお近づきになれても涼宮の尻に敷かれてまで居たいとまでは思わねえよ。そういうのはキョンだけで十分だろ、頑張って生け贄になってくれ」
 散々な言いようの谷口のケツに蹴りを一発かましたところで席に戻る。すると、
「あんた最近阪中ちゃんと仲いいみたいだけど」
 とまあ後ろの席のハルヒにまで至らない事を言われる始末だ。これも谷口のアホのせいだな。
「あのなあ、クラスメイトと挨拶したくらいで一々仲がどうとかって話か? それに阪中はお前の方が仲いいだろうが」
 本気で馬鹿馬鹿しいので呆れて机に伏せながらそう言うと、
「む、そりゃそうだけど…………」
 それでいいじゃねえか、お前もちゃんと挨拶はしろよ。という事で俺は授業をきちんと聞くためにもホームルームまで休む事にした。
「………………気にしすぎかな………」
 ハルヒが何か呟いたのも、
「…………………」
 誰かの視線があった事も気付かなかった訳だしな。とにかくそこまで気にされるようなもんじゃなかったのさ。


 だが一度言われると結構そういうものかと思うもので、そうなると妙に阪中が気になってくる。
 というか、視線が自然に合うような気がするのだ。例えば授業中ふと周りを見回して見た時。昼休みに国木田達と弁当を食おうと席を立った瞬間。谷口の馬鹿話に呆れてやれやれと呟いた時。放課後ハルヒに引っ張られて教室を出て行く時なんかにな。
「自意識過剰ってやつだな…………」
 我ながら馬鹿馬鹿しくなってくる。第一教室に居るのは一年近く見知った顔ばかりなのだから視線が合ったからといってどうしたもんじゃない。それを言うならハルヒと視線なんて………………………案外合ってないな、まあ後ろにいるからというのもあるが。
 すっかり自己嫌悪に陥りそうになりながら俺は放課後を過ごし、珍しく古泉相手に連敗しそうになったほどである。
「どうしました、どこか体調でも悪いのですか?」
 勝っておいて随分な言い草だな、そんなに自分の実力が信じられないのか? とはいえ古泉に怪しまれないうちに勝ち星を稼いでおくとしようか。
「最近はよく寝てるというか寝すぎだな、頭がすっきりするかと思ったが単にぼーっとするだけだ」
 よく寝れるのは夜の散歩のせいだし、ぼーっとしてるのは阪中の視線のせいのだから原因は違うのだけれどな。いや? どちらも阪中絡みと言えなくはないのか? つまらんな、阪中は何の意図もないだろうに自分勝手に想像してるだけだし。馬鹿馬鹿しくなってきたので棋盤に集中する事にする。
 結局、古泉は連勝することはなく、戦績は変わりがないままに終わった事は明記しておく。ただし、長考する時間が俺にもあったという点では珍しかったといえるのかもしれないが。
「…………………」
 そういやハルヒは今日も大人しい。だがたまに突き刺さるような視線を感じるので何らかの思惑があるのではないかと多少の緊張感を抱えておくのがこの部屋でスムーズに過ごすコツである。
「…………で………だけど…………そんな事も………………」
 もれ聞こえるセリフが恐ろしく思うのだが、どうすりゃいい? とはいえ実害が無い時点では触らぬ何とかに祟りはない、はずだ。
 こうして、長門が本を閉じる音がしたらその日は終了となるわけだ。朝比奈さんの着替えを待って帰宅と相成り、俺は今日一日が無事に過ぎたことを『機関』が信奉している神様以外の神に感謝するんだな。
 そして、夕食を片付けたら自然と靴を履き替えていたりする。ああ、放課後になれば部室にいくのが習慣になっちまったようなものなのだろう。気合も入れずに適当に歩けばいいだけだ、散歩もいい加減慣れたもんだよ。
「あ、こんばんは」
 おう、と軽く手を上げれば足元の子犬も尻尾を振ってくれる。我が愛猫もこのくらい愛想がいいといいんだがね。
 別に待ち合わせている訳でも無いはずなんだが阪中とは上手く落ち合える。散歩コースも確定したみたいでルソーも最近は歩いて帰れるようになってきた、そろそろダイエットも成功するかもな。
 そんなルソーが足元に絡みつきながら阪中と歩くのも恒例になっている。考えてみれば毎晩このコースを歩く阪中も結構大変なんじゃないかと思うのだが。
「ううん、別に平気なのね。それよりキョンくんこそ大丈夫なの?」
「まあいい運動になってるよ。それにSOS団はインドアだからな、少しは体も動かしといた方がいいさ」
 実際帰ってよく寝れるしな、そう言うと、
「その割には授業中も眠そうだけどね」
 と笑われてしまった。おいおい、そんなに寝てないはずだぞ。それに俺より後ろのハルヒの方がよっぽど睡眠学習してるぜ。
「涼宮さんは凄いよね、いつも成績いいし」
 まったくだ、頭の中身が違いすぎて何で北校にあいつがいるのか理解出来なくなりそうになるぞ。
「運動も出来ちゃうし、女性から見ても綺麗なのね。私なんか羨ましくて………」
 確かに性格さえ除けばハルヒはスーパーウーマンそのものだな。ただし性格で全て台無しにしているのだけは否めない。
「それにキョンくんとも仲良くお話出来てるし………」
 最後に阪中が呟いた言葉はルソーに躓きそうになったので聞こえなかったけどな。だが阪中がハルヒに憧れに近いものを持っていることだけはよく分かった。まあ憧れるだけにしておいてもらいたい、万が一にでもああなってしまったら親御さんが泣くと思うぞ。それに、
「俺から見れば阪中も十分可愛いと思うけどな。それに優しいし、見た目だってそんなに悪くもないと思うぞ? もう少し自分に自信持っていいんじゃないか?」
 ルソーへの態度やSOS団の連中に対しての対応、何よりあのハルヒと友人関係を築けるんだからな。実は凄いヤツなんじゃないかと思えてくる。
「あ、あの……………うん、ありがと………………」
 阪中が真っ赤な顔で俯く。えーと、俺何か変な事を言ったか? と、先程の発言を思い返し、我ながらなんと恥かしい事を言ったものかと顔を赤くしてしまうのであった。
 いや、確かに阪中は可愛いと言って差支えが無いレベルだと思いはするが何も本人を前にして言うもんじゃなかった。つい勢いに任せて痛恨の一言を吐いてしまったもんだ。
「あー、その、すまん………」
「ううん、こっちこそ…………ごめんなさい」
 何故謝っているのかお互いに分かっていないのだが、とりあえず謝ってしまうのは何故だろうか。そのまま黙って阪中の家の近くまで歩く俺達なのであった。妙に気恥ずかしいので帰ってもよかったのかもしれないが、ここで離れるのもまたおかしな感じがしたからな。
「ごめんね、いつも」
 もう謝る必要なんか無いと思うのだけれど、阪中は口癖になっているように俺に頭を下げた。
「気にすんなって。こっちも好きでやってるんだ、謝られるようなもんじゃねえよ」
 そう言って手を振るのも癖になりそうなんだけどな。こういうのも別に悪くないなんて思うのだから俺も意地の悪いところがあるのかもしれん。
 ただし、今晩の阪中は少しだけ様子が違っていた。いつもならこれでルソーを連れて元気に去っていくのだが、何故かその場でモジモジと立ち止まっている。何かあるのかと思うと、決心したように阪中はこう言った。
「あ、あのね? また…………また明日も散歩してるから! だから、あの、そのね? えーと、」
 そんなに慌てる必要があるのかよ? まったく、言いたい事は分かったからさ。俺は阪中の頭に手をやると、柔らかめの髪をくしゃっと撫でた。
「おう、また明日な。いつものとこでいいか?」
 思わず妹相手のような態度を取ってしまったのだが阪中は大人しいもんだったな。
「うん! あの、今度は何か持ってくるから! それでね? 家にも寄ってくれたら嬉しいのね」
 分かったよ、だけどいきなり一気には無理だぜ? まあとりあえずは明日だな。
「えへへ、ありがとうキョンくん! それじゃまた学校で!」
 阪中は嬉しそうに手を振って家まで帰っていった。もう俺がここにいるのは親にもバレバレだろうな、それなら家へ呼ばれるのもおかしくはないのかね。
 ただまあ、あれだけ喜んでもらえれば散歩に付き合う甲斐もあるってもんだろう。それに何となくだが俺もこの夜の邂逅が待ち遠しくなってきてもいるような。
 明日の朝、学校で阪中に会ったらもう少し愛想良く接するか。そんな事を思いながら俺も帰ってベッドの上で寝ているであろう愛猫の世話にでも勤しむ事にするのであった。



 そんな俺が毎晩の散歩を阪中と楽しんでいた事がハルヒにばれ、何やらよく分からんがSOS団の活動が放課後から夜まで延長されてしまう事態になったのはまた別の話だが、それを少しだけ不満に思ってしまった俺と阪中が散歩の後にもう一回散歩をする事になったのはもっと違う話なのだったりもする。
 ただ、阪中と過ごす時間がこれだけ楽しいという事は新しい発見であり、阪中の笑顔はハルヒとは違う明るさで、俺はその笑顔を見る事が楽しみになっている、と言う事だけは言っておこうと思う。