『SS』 Dialogue:センター
「ねえ、最近マンネリだと思わない?」
「なにがだよ、というか毎日こうしてて今更マンネリもあるもんか」
「わかってないわねぇ、毎日やってるのは不思議を探すために必要な下準備じゃない。あたしが言いたいのは地道な努力の積み重ねも大事だけど、たまには変化も必要なんじゃないかってことなのよ!」
「そうかい、そいつはいいところに気付いたもんだ」
「なによ、文句あるの?!」
「うんにゃ。それでどうしたいんだ、お前は?」
「そうねぇ………」
「おいおい、何も考えてなかったのかよ?」
「そんなことないわよ! えーと、そうだ! ポジションなんかどうかしら?」
「はあ? 意味がわからん、もう少し俺達にも通用するように説明してもらえないか」
「しょうがないわねぇ…みくるちゃん、有希、古泉くんも、ちょっといいかしら?」
「なんだ? 全員立たせて何する気だ?」
「いいから! はい、カメラセットしたから並んでみて!」
「ふぇ? あ、あたしもですか〜」
「…………了解」
「では僕らも」
「はあ、何だってんだよ……」
「ほれ、並んだがどうすんだ?」
「気付かない? この順番がマンネリなのよ!」
「古泉、朝比奈さん、ハルヒ、長門、俺、の順番だが。これでいいじゃねえか、どうせ中心がお前だったらいいんだろ?」
「分かってないわねえ、確かに団長たるあたしがセンターなのは今まで当たり前だったわ。でもそれが固定概念だったと思わない?」
「なるほど、涼宮さんは自らの位置を変えてでも新たなる可能性を試してみたいという事ですね?」
「そんな面倒な事しなくてもいいだろ、別に誰も文句は言ってないんだし」
「そんな事だからあんたはいつまでたっても平団員なのよ! いい? 安定している今だからこそ新しいチャレンジがなければ進化しないの! マンネリズムは停滞を生み出す温床なんだから!」
「いや、安定してるならそれが一番だと思うんだが……」
「いいから! 何事も挑戦よ!! それじゃあ…………キョンがセンターね」
「あん? 何で俺が…」
「いいから早く立ってみる! で、カメラのタイマーを設置して………」
「俺の隣はハルヒと長門か、朝比奈さんと古泉が両端でいいのか?」
「まあ実験だからね、とりあえずこれでいくわ」
「…………ど、どうですか〜?」
「うーん、ちょっと地味ねえ」
「地味で悪かったな」
「じゃあ有希とみくるちゃん交代ね、それでもう一回やってみましょう」
「俺と古泉はいいのか?」
「まずはこれでいってみることにするわ」
「そうかい。やれやれだ、一体何時までかかることやら」
「…………で、どうだ?」
「うーん、やっぱり物足りないわね」
「そりゃそうだ、俺が真ん中で期待通りにいくもんかよ。それなら朝比奈さんや長門の方がいいだろ」
「あとちょっとなのよ、何かが足りないんだわ………」
「だから俺に華が無いってことなんだろ? 人を貶めて何が楽しいんだよ」
「それよ! 華が足りないんだわ!」
「だから俺をいじめて何が楽しいんだよ………」
「そうね、それならこうすればいいんじゃない?」
「お、おい! いきなり腕を組むな! 何でそうなる?!」
「華よ、華!」
「自分で言うな! ってタイマー動いてる?!」
「うん、いい感じじゃない?」
「あ、あの〜、もう少しこうすれば……」
「ちょ、みくるちゃん?!」
「あ、朝比奈さん? いや、そんな首に手を回して抱きつかれても!」
「華ですよね〜」
「タイマー動いてる! いつの間にセットしてたんですか、朝比奈さん?!」
「どうですか、キョンくん?」
「ええ、いいんじゃないでしょうか……………隣の団長が笑顔だともっと良かったんですけど」
「…………エロキョン」
「いや、不可抗力だろ?!」
「………インパクトが不足している」
「な、長門?」
「こうすれば最適」
「有希?! あんた何を………」
「な、長門さん!?」
「うわっ! 急に飛びつくな長門!! お前は軽いからいいけど倒れたらどうするんだよ!」
「…………タイマーは始動中」
「なんだと!?」
「…………どう?」
「ああ、見事なお姫様抱っこだ。自画自賛したいが、周囲の表情があまりにも驚きすぎだと思わないか?」
「インパクト勝負」
「そうなのか? 華がどうとかって話だったような………」
「ゆ、有希? なかなかやるわね…………それなら、あたしだって!」
「おい! ハルヒ!! お前それじゃお姫様抱っこじゃなくて単に飛びついてるだけだろ!」
「あ、あたしも!」
「朝比奈さん?! それ胴タックル!!」
「…………そう」
「長門ー!! おぶさるなーっ!!」
「あ、タイマーは連続で動くから大丈夫よ」
「誰もそんな事心配してねえー!!」
「さて、僕が既にあの場を離れて傍観していることに何時気付いてもらえますかね? まあ面白いからいいですけど」