『SS』 曖昧3cm、それプニッてことかい? ちょww 後編

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飯も食ったしトイレも行った、後は運動する気もなければ別段話がある訳でもない時には寝るに限る。俺はそう思って机に伏せていたのだが、
「おーい、キョンに客だぞー」
谷口の声で顔を上げるしかないのであった。見れば歓迎したくはないハンサム面が教室の外に立っている。何の用だ、とも言っても詮無いので渋々ながら古泉の話を聞く事にした。
「あまり時間もないので端的に申しますと、涼宮さんの機嫌がよろしくありません」
それは見れば分かる。それどころかその不機嫌オーラを浴び続けてるんだからな、どうにかして欲しいくらいだぜ。
「ええ、ですがどうにも判断がつきかねるんです。閉鎖空間が出るほどでもないんですが機嫌は良くないという」
どういうことだ?
「分かりやすく言えばモヤモヤしている、という表現がふさわしいかと。ただ何となくなのですが、涼宮さんはモヤモヤしながら楽しんでいる節もあるのです」
なんだそりゃ、あいつは機嫌悪いのが好きなMッ気でもあるのかよ? 古泉は苦笑しながら、
「さすがにそれはないでしょう、ただ普段の彼女としては経験できない感覚なのかもしれません。それが何なのかは分かりませんけど」
さっぱり意味不明ながらも閉鎖空間が出ていないという点だけで安心してもいいのか?
「まだ油断は出来ませんがね。少なくとも放課後の活動の時には何とかしたいところです」
そうだな。古泉はそれだけ言うと自分のクラスへ戻っていった。これは俺にもどうにかしろってことだろうな、厄介なもんだ。
俺は残り時間を食休めに当てる事にした。まあ放課後はどうにかなるだろう、ハルヒもそこまで機嫌が悪くないならいいだろうし。長門や朝比奈さんもいることだしな。
などと思っていたら変わらないオーラが迫ってくる。おいおい古泉、本当に閉鎖空間は出てないんだよな?
背中から当てられる黒いオーラに辟易しながら、俺はひたすら放課後を待つしかないのだった………



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それにしてもお腹すいたわね………
でもしょうがないわ、ここで油断するわけにはいかないもの!
それにみくるちゃんも頑張ってるし、有希だっていつものあの子からは考えられないわよね。
だから団長としてあたしも頑張るしかないってことよ!
なのにキョンはのんびり寝てるし。
こっちの苦労も知らないで………いや、言ってないけどね!
とにかく放課後もどうしようかしら? あたしはそう思いながら午後の授業も体力温存に勤める事にしたのだった………

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ふぇええ〜、お腹すきました〜………
でも仕方がないですよね、涼宮さんだって長門さんだって同じなんですから。
それにこうやって女の子同士で集まって何かするなんて滅多にありませんし、頑張らないと!
うーん、それでも鶴屋さんには心配させちゃってますし…………
とりあえずは放課後はどうするんだろ? キョンくんや古泉くんには悪いな、と思いながら午後の授業も大人しく過ごすあたしなのでした………

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インターフェースが空腹のアラームを認知、行動には支障はない、はず………
涼宮ハルヒ朝比奈みくるも同様の状態であると推測される。
わたしは行動に支障が出ていないが、有機生命体たる彼女達には負担が大きいのでは?
しかし、わたしはこの状況を好ましくすら思えている。
同性が集団で行動する事による一体感、それはわたしが経験したことのない知識。
ひとまず放課後なのだろうか? わたしは来るべき時間まで行動を制限して安静にしておくのだった………

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ようやく放課後のチャイムが鳴ったのだが、ここで俺は自分が掃除当番だったことをすっかり失念していたのである。つまりはハルヒ一人を先に行かせなくてはならない訳で、今日のあいつを鑑みるにそれはかなり危険な行為に思えたのであるが。
かといって押し付けようと思った谷口や国木田はあっさりと俺を裏切り帰宅の途についている。しかもこの方法をハルヒが覚えれば強制的に掃除をサボらされる回数が増えるかもしれず、それは俺にとってもクラスの雰囲気としてもあまり好いものとは言えないのは確かだ。仕方なく掃除を早めに終わらせる事にした俺は、またも奇妙な光景を目にしたのであった。
あの涼宮ハルヒが普通に歩いて教室を出て行ったのである。これは俺からすれば異常事態としか言い様が無い、何故ならば授業のほとんどを睡眠に費やしても放課後に賭ける女なのだから。昼休みの件もそうだったんだが、あいつが走らないなんて太陽が西から昇って西に沈むようなもんだぜ。東方は赤く燃えないんだよ、ここでは。
とにかく非常事態ではあるのだが誰かに相談も出来ないのが辛いところである。なんといっても相談相手が全員俺より先にハルヒに会っている可能性が高いのだ、万が一でも俺のように掃除当番にでもなってくれることを祈るしかない。
古泉辺りから電話でもかからないかと不安視していたのだが、そのようなこともなく適当を極めた掃除も終わり俺は鞄を引っつかんで教室を飛び出したのだった。



すると教室を出てから旧校舎に向かう途中で不審そうな顔をしながらトボトボと歩くという大変珍しい姿の先輩に遭遇してしまう。こんな顔の知り合いに声をかけないほど俺も心無い男ではないので、
「どうしたんです、鶴屋さん?」
と聞いてみるしかないのである。何といってもあの鶴屋さんがここまで落ち込んだ姿というのは見るに耐えない。
「あー、キョンく〜ん…………」
また随分とへこんだ声である。にょろ〜ん、と言わないだけマシなのだろうか? という俺の脳内でのくだらない考えはともかく、
「あのさあ、みくるに何かあったのかい?」
とまあ鶴屋さんに訊かれてしまったのだ。朝比奈さんに何かあったんですか?
「ん〜、何か今日一日みくるに元気がなくってさ。あたしが訊いても変にはぐらかせちゃうんだよ」
それは随分とおかしな話だ。朝比奈さんが自分の正体や未来の話ならともかく、それ以外の事で鶴屋さんに内緒にするような話などあるとは思えない。
となれば何か他に原因は………………無いともいえないか。一昨日と今日の機嫌の悪い団長の顔が浮かんでくる。
「体調が悪いなら早めに一緒に帰ろうって言ったんだけどSOS団の活動は休めないって部室に行っちゃうし……………………ねえキョンくん、良かったらみくるにそれとなく訊いてくんないかな?」
両手を合わせてお願いする鶴屋さんなのだが、そんな事されなくても朝比奈さんが何か悩んでたりしていらっしゃるなら聞いてあげますよ。というか俺の方が心配で聞かなきゃいけない気になります。
「んじゃあ、お願いするよっ! あたしは一応帰っとくから後から連絡ちょうだいね!」
鶴屋さんはいつもよりも若干力なく歩いて帰っていった。あのお方をここまで落ち込ませるとは朝比奈さんは何をしてしまったんだろうか?
とにかくハルヒが原因の可能性は高いとみて間違いはなさそうだ、俺の足も若干急ぎ足になってくるというものだ。



ところが今日という日はとことんまで先輩と縁がある日らしい。旧校舎に向かう渡り廊下で、
「ああ、ちょうどいいところでお会いできましたね」
と声をかけられてしまったのだから。ちょうどいいというよりもあなた待ち伏せしたでしょう?
「喜緑さん、どうかしたんですか?」
生徒会書記であり、長門のお目付け役らしい先輩にここで出会うというのはあまりいい予感はしないんだが。そして悪い予感というのは的中しちまうんだよなあ。
「いえ、少々長門さんの事についてご相談がありまして」
ほらな? まさか長門まで何かあったということかよ。しかし喜緑さんなら何でも分かりそうなもんだけどな。
「はあ、ところが長門さんが一昨日より意識的に情報を遮断してまして。このような事態は初めてですけれど長門さんの自己進化の可能性も否定出来ませんので静観しているという現状です」
まあ長門も隠し事の一つがあってもいいとは思うけどな。しかしまた一昨日かよ、一体何なんだ? 一昨日からあいつらに何があったんだというんだよ?
「そこであなたに訊いていただきたいと」
直接訊けばいいじゃないですか。
「それが出来れば頼みません」
はっきり言われてしまった。喜緑さんは不本意なのだろう、
長門さん本人も拒否していますし、あの部室内は元々磁場が混同していてスキャンできませんから」
淡々と言っているが宇宙的な力も通用しない空間となってるのかあの文芸部室。そんなとこにいてよく無事だな、俺。
「あなただけは特別ですから」
いや、唯一の普通人ですから。しかし宇宙人は話が終わったかのようで、
「ではお願いしますね」
そう言ってさっさと立ち去ってしまいましたよ。何となく釈然としない気持ちだけ残された気がするんだけど。
だが長門は気にかかる、ああ見えて喜緑さんは長門を心配してはいるんだしな。それに俺だって長門が気にならない訳がない。
その割にはえらく時間を取られたような気もするが、とにかく急いで部室へと向かう俺であった。




すると部室の前に所在無げに佇む色男。ん? 締め出しを食らってるのか?
「おい、どうしたんだ古泉?」
俺の問いにいつもとは違う苦笑を浮かべた副団長は無言で部室を指した。どうやらこいつとしても想定外らしい。
古泉の指した先のドアには一枚の張り紙が貼ってある。
そこには自己主張が強い字で黒々と、
『男子禁制!! 入室禁止!!』
と書いてある。あからさまに誰が書いたか分かるのだが、何を考えているのかサッパリ分からん。
「とりあえず朝比奈さんと長門も中か?」
「そのようです、僕が来た時には既にこの状態でした」
そうか、ここに来る途中で鶴屋さんと喜緑さんに会ったんだが。
「僕は生徒会室で喜緑さんにお会いしました。どうやら長門さんのお守りも大変なようで」
らしいな。まあ長門が自己主張するのはいい事だと思うぞ?
「それは僕から見てもそう思いますが、なかなかそれだけではいかないものですよ」
そう言って肩をすくめる姿は我が儘な神様を持った悲哀を感じた、と言ったら言い過ぎかもな。
「とりあえずはどうする?」
こんなとこに突っ立っていても埒が明かない、とりあえずは朝比奈さんと長門の無事を確認したいんだが。
「まあしばらくは様子見といったところですか。強引に話しても涼宮さん達の考えがわからなくては仕方ありません」
とばかりは言ってられない気もするんだが。しかしどうしようもないまま俺は張り紙を眺めるしかないのであった…………

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なんか表が騒がしくなってきたわね、どうせキョンだろうけど。
流石に締め切ってる部屋の中で暖房も、ストーブだけじゃないわよ、この為に持ってきたんだから! かけてるし、厚着のまま運動してるし。
流れる汗が止まらない、みくるちゃんもそうみたいだけど有希だけは平気そうよね。でもうっすらとは汗かいてるのかしら?
とにかくもう放課後はキョン達はしばらく入室禁止ね! 団の活動は大事だけどこっちだって必死なんだから!!
でもこれだけ女の子同士で一緒にいるのって初めてかもしれないわね。みくるちゃんや有希と共通の話題で盛り上がってるのって楽しいかも!
うん、楽しい! でも………あれ? ちょっとボーっとしてる………かも………
えーっと…………目の前が…………回って…………真っ暗に……………?………

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う〜ん………汗が…………髪の毛がベタベタします〜…………
流石にお部屋も暑いですし、その…………厚着のままで運動してますし…………もうふらふらです………
汗がですね? うーん、胸とか………その谷間を流れるとくすぐったくて………それに気を取られちゃうと他のとこでこけちゃったりしちゃいますし。
とりあえずは放課後はしばらくこれなんですかぁ〜? あたし、体持つのかなぁ…………でも頑張らないと!!
それに涼宮さんも長門さんもどこか楽しそうですし。ふふっ、あたしも楽しいかもですね。女の子だけでみんなで一緒にってありそうで少なかったですから。
え〜…………でも……………あたし、もうダメかも………………
あれ? 涼宮さん………? あたしも……………ふにゅうぅ〜……………

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部室の外に生体反応。古泉一樹と…………彼。恐らく表に貼った張り紙により入室を躊躇しているものと思われる。
現状において室内は気温、湿度ともに上昇中。原因は我々にある。過度の運動による体温の上昇はわたしの有機生命体ボディにも影響がある。
発汗を感知、制御可能なレベルであるが、わたしは何故かそのままにしている。涼宮ハルヒ朝比奈みくるが何もしていないのにわたしだけが情報を操作するのは不公平。不公平? 分からない。
ひとまず放課後の時間帯は我々は部室内での活動が主になる。これに彼を参加させないのは女性としての判断、だという。わたしはその不合理な考えを好ましく思えるほどになっていた。
女性同士だから生まれるという一体感はわたしがこの体であったからこそ。それは彼にも分からないもの。わたしは今このような時間を過ごせる事を嬉しいとすら感じられるのだ。
だが、それはわたしの周囲へのサーチを怠るという結果を生み出したのであった。いや、わたし自身判断出来ていなかったのかもしれない。
涼宮ハルヒ朝比奈みくるの心拍数が増加、呼吸が乱れたのを気付いた時には彼女達が倒れた後であった……………

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男二人で廊下に立ち尽くすことしばし、流石に少々イライラしてきたのだが。
「そうですね、中で何が行われているか分かりませんし」
古泉の顔にも若干焦りのようなものが浮かんでいるように見えてきた。どうする?
「そうですね、とりあえず声だけかけてみましょうか。その反応で後を考えてもいいでしょうし」
場合によっては帰るぞ。別に長門や朝比奈さんに話すのは今日じゃなくてもいい気がしてきた。
「それは涼宮さん次第でしょうね。ではお願いします」
……………なんで俺が………………と言っても仕方ないのでドアをノックしようとした時だった。
ドアの向こうでドサッと何かが倒れるような音がして。
「?! 涼宮さん!!」
古泉が何か感じ取ったように声を上げた時。
「…………入って」
向こう側からドアが開き、長門が顔を出してきたのだった。それと同時に室内から熱気が俺の顔を襲う。何だ?!
急いで部室に飛び込んだ俺が目にしたものは、思い切り暖房が効いている部室の中で顔を赤くして倒れているハルヒと朝比奈さんだった………………




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さて、今僕の目の前では非常に貴重な光景が展開されています。
倒れた涼宮さんを見た彼は急いで部室のドアを開け、空気を入れ替えました。僕は取り急ぎ水を汲んできます。
長門さんが普通に動けるので手伝ってもらい、涼宮さん達を安静にしておいてしばらくしておくと彼女達の意識も戻ったようでした。
そして二人が目にしたのは、彼女達が意識を失っていた間に長門さんから事情を聞き、怒りの表情を浮かべた彼の顔だったのです…………



「で? お前らはダイエットしてたという訳だな?」
珍しく彼が涼宮さんを問い詰めています。というのも涼宮さんは正座していますし、彼は腰に手を当ててそれを見下ろしているからです。
いや、涼宮さんだけではありませんね。朝比奈さん、長門さんもその横で正座して彼の話を聞いています。
涼宮さんがこれもまた珍しく、小声でいい訳するように、
「だ、だって健康診断で…………」
「それで二日も何も食わなかったって言うのか!」
彼の一喝で首をすくめる涼宮さん。有無を言わせない迫力が今の彼にはありますね。
「大体食べなくて部屋を閉め切って熱気の中で運動だと? どんな我慢大会だ、そりゃ」
何と、あの涼宮さんが彼の言う事に反論もせずに黙って俯いてしまっています。そして彼の怒りの矛先は、
「朝比奈さん……」
「ひ、ひゃい………」
「あなたは年上で先輩なんですからハルヒがこんな無茶をしたらまずは止めなくちゃダメじゃないですか! それを一緒になってどうするんですか?」
「そ、それは…………」
「確かに言いにくくても自分の体も心配してください!」
「ふぇ…………」
朝比奈さんにここまで強く言う彼なんてもう見る機会はないかもしれませんね。それに、
「…………長門
「…………………」
「お前なら分かってたはずだよな?」
「……………多少」
「じゃないよな?」
「…………………」
「お前ならこんな事は無駄だって分かってると思ってたんだがな。それを何だ、お前らしくもない」
「…………それは……」
「いいか、健康を害するような事はやめろ。それがハルヒの命令だろうとお前はちゃんと言わなきゃダメじぇねえか!」
「……………………………ごめんなさい」
長門さんをここまで叱るなんて普段からすればありえませんよね。あ、涼宮さんが反論するようです。
「で、でも女の子にはそういうのが重要なのよ!」
「うるさい! 勝手にやって倒れておいてそういう事を言うな!!」
おお、あっさりと怒鳴りつけましたね。その迫力に涼宮さんが一瞬で押し黙ってしまいました。
「そういうのを女が気にするのは分からんでもないが、倒れるようなやり方が気にいらんと言ってるんだ俺は!」
いやはや、普段は温厚と言える彼がここまで激高しているのを見れるとは。前に一度映画撮影の時に見ましたが、あの時は頭に血が上っただけでしたから本当に怒ってるのは初めて見るかもしれません。
それはかなり破壊力がありましたね、女性陣三人は先ほどから何も言えずに正座したままですから。
まあこれは凄いですよね、神と未来人と宇宙人が正座で普通の人間にお説教されてるんですから。
しかも三人とも彼に怒られて涙目なんですよ、あの長門さんが僕から見ても分かるほどに。
そこには世界を変える神も、導き手としての未来人も、全てを凌駕する宇宙人も存在しません。ただ怒られて俯いてる女の子たちがいるだけなのです。
しかも彼女達は分かってるのです、何故自分たちが叱られているのかを。
それは彼が何よりも自分達を心配してくれているから。自分達を普通の女性として扱ってくれているから。
だからこそ涼宮さんからは閉鎖空間が生まれる様子すらありません、ここで僕がいることでもお分かりでしょうけど。
怒られて悲しい反面、嬉しいんです心配してもらえて。女性心理とは複雑なものですね。
しかも彼はそれを利己的でも計算でもなくやってのけてますから。そこが凄いのですけどね。
「まったく、お前ら普通にしてて可愛いんだからそういう事する必要ないじゃねえか」
ほらね? まったく彼は無意識で言ってのけるのですから。見てください、三人の顔を。一人無表情に見えますが、他の二人は先ほどのように真っ赤になってしまいましたよ?
「か、かわいい…………」
「ふぁあぁ〜」
「………………わたしが」
まああっという間に泣き顔が無くなってしまいました。分かりやすいといえばそうなりますね。
そして止めの一言です。
「やれやれ、それじゃ今から何か食いに行くか」
三人の顔が輝きました。さすがとしか言い様がありません。
ほら、涼宮さんがもう立ち上がってます。
「それならさっさと行くわよ!!」
もう彼の腕はしっかり捕まれてますし。
「ちょ、待てハルヒ!!」
もう遅いですよ、反対の腕は長門さんがホールド済みです。朝比奈さんも笑ってそれを追います。
やれやれ、と彼の口調を真似ながら僕も後を追いますか。
まあ女性陣もどこか楽しそうでしたし、僕としては閉鎖空間も出ずに済みましたし。
本当に平和な一日でした、と僕は思うのでした。



「いや、俺が奢るのかよ?!」
「あったりまえじゃない! あんたがご飯食べに行くって言ったんだから!!」
「ありがとうございます、キョンくん」
「感謝する」
「はあ、やれやれだ…………」
ね? いつもどおりだったですね。