『SS』 こうふくなポンジー


むかしの はなしです。とあるくにの とあるまちに いったいの おおきな おうじさまの ぞうが たっていました。
「ふん、ぼくは でばんなど ほしくは なかったんだ。しかも うごけないとは ふほんい きわまりない。これも きていじこうだと いいたいのかね?」
ものすごく ふゆかいな ひにくな えみを うかべているものの、まあ まわりからは こうふくの おうじと よばれていた ことに しといていい?
「しかたない、ここは したがって おいてやろう」
すさまじいほどに そんだいな おうじさまですが、おうじさまだから そうなんですかね。そうおもわないと なんかムカつく。



そんなおうじさまが いるまちにも そろそろ ふゆの けはいが やってきたようです。
「どうぞうの ぼくには まったく かんけいない はなしだな」
ひとこと おおいんだ おまえは。しかし ふゆが ちかくなると わたりどりも たびだつ じきなのですが。
「ウェーン、なんで わたしだけ おいてけぼり なんですかー?!」
たまには はぐれる まぬけな とりも いるものです。ここにも いちわの ツバメが ツインテールを ゆらしながら ないていたりも するのでした。
「ひとの ましたで ピイピイなくな。うっとおしい」
おまえは おにか? まったく やさしさの かけらもない おうじさまです。そりゃツバメだって おこります。
「もう! なんなんですか、ひとを みおろして! だいたい なんで あなたが おうじさまなんですか?!」
おもいっきり ひていですか。まあね、はいやくに むりしか ないわな。それでも はなしを すすめる さくしゃの こんじょうだけは かいなさい。
「それは さくしゃが タイトルから さきに かんがえる シリーズだからだ。むちゃな はなしなのは きていじこうだな」
それで ごまかせると おもうなよ。あさひなさんなら ともかく なぜに おまえを かかねばならんのだ。
「とりあえず さっさと はなしを おわらせるぞ。これを こなせば とにかく かえれるんだからな」
なげやりだな、こいつも。ツバメも いやいやながら なみだを こらえ、
「グスッ、これも ささきさんとの しんせかいを つくるため………………がんばるのです、わたし!!」
へんに まえむきなのも どうなんだかなあ。とにかく はなし すすめていい?
「ところで その ささきは どうした?」
あ、それきいたら、
「……………でばんが どこなのか わかりません…………」
ツバメは おおいに おちこみました。というか おしえて もらえないのかよ。
「うぅ…………かみは キマグレンなのです………」
なきたくて わらいたくて ほんとの じぶん がまんして つたわらないツバメです。
「あわれだな、どうじょうは しないが」
「あなたたちは なぜ もっと きょうりょくてきに なれないんですか?!」
ああ、けっきょく ないちゃった。ピョコピョコゆれるツインテールが ぎゃくに こっけいだなあ。
「そうだ、このさきに あしの ふじゆうな ろうじんが いるので ぼくの めに なっているルビーを もっていけ」
「はなし すすめちゃうんですかー?!」
あまりにマイペースな おうじさまですね。はなしが はたんしてるんですけど それすら むしですから。
「あーもう! こうなりゃヤケです!! いってやろうじゃ ないですか!!」
ツインテールを なびかせながら、ツバメは おうじさまの かおまで とびあがりました。
「ところで ふじわらさんの めを くりぬいちゃうんですけど いいんですか?」
「フン、かまわん、どうせ どうぞうなんだからな。どくしゃの のうないでは かわらない ぼくの はずだ」
そこを いわれたら どくしゃさんの そうぞうりょくに きたいするしか ないですねえ。
「それじゃ、えんりょなく」
「えんりょする キャラでも ないだろうが」
なにこのギスギスした かいわ。ともかくツバメは おうじさまからルビーを ぬいて さっそうと とびました。
「これが つづくのか? まったく このじだいの にんげんは あたまが わるすぎる」
かましい、はなしを つづけるからな。あー、キョンにしとけば よかった…………



なんだかんだと いいながらも そこはツバメです、あっというまに ろうじんの いえに つきました。
「えーと、だれ?」
「やあ、ささきさんとは ちゅうがくじだい どうきゅうせい だったんだけど」
にこやかに ほほえむ どうがんの おとこのこでした。あ、ろうじんだっけ。
「とりあえず、はい これ」
ツバメは あっさりとルビーを わたすと、
「ところで おなまえは?」
「くにきだ っていうんだ」
「それで ささきさんの ちゅうがっこう じだいの はなしをですね?」
「ああ、それが ききたかったんだね」
すっかり もくてきを わすれてやがる。まあ ささきの ちゅうがくじだいのエピソードに いっきいちゆうするツバメなのでした。
はなし すすまねえー!!!



「………きさま、やるき あるのか?」
おうじさまの ことばも うなずかざるを えません。なんじかん はなしこめば いいんだ こいつは?
「えー? だって ささきさんの ちゅうがくせいのころの はなしなんて きちょうじゃ ないですか!」
そればっかりだな、こいつも。よほど いいはなしが きけたのか、ツバメは ゆめみがちな ひとみです。
「まあいい、つぎは はたらきばしょを なくした わかものに このサファイアを もっていけ」
「えー? まだやるんですかー?! もうやすみたいのです!」
「さんざん しゃべってた だけだろうが!」
まったくもって そのとおりなので、しぶしぶツバメは とびたちました。
「まったく、ひとづかいが あらいのです!」
どこがだ、といいたくなるのは しょうがない。



しかし、ツバメが わかものの いえまで いくと、なぜか むしょくのはずの わかものは ベンチプレスを していました。
いかついふんいきの わかものに ツバメは おそるおそる こえを かけます。
「あ、あのー、なにを してるんですか?」
わかものは じぶんの きんにくを こじしながら、
「まあアメフトで はげしい ぶつかりあいを するためには ひつような ことだからな」
スポーツマンらしい さわやかな えがおです。まったく むしょくだという ひあいが かんじられませんが? ツバメも あきれながら、とりあえずサファイアを わたします。
「おお、すまんな。まったく、ささきと キョンの どうきゅうせいだからって むりやり だされてたから このくらいは いいだろう」
すると、それを きいた ツバメのめが キラーンっと かがやきました。
「ささきさんと?」
「ああ、おれは キョンとの ほうが なかは よかったが」
「それは ちゅうがくせいの ときですよね?」
「とうぜんだろう」
「じゃあ ささきさんの ちゅうがくじだいの はなしを ごぞんじですよね?!」
「うむ、あいつは よくキョンと つるんでたからな」
「そのおはなし、 きかせてくださいっ!!」
けっきょく そこなんだなあ、ツバメは じかんを わすれて はなしこんで しまいました。



「……………ばかか、おまえは」
まったくもって そのとおり。だがツバメは くじけないのです! 
「はあ〜、ちゅうがくせいに もどりたい………」
ダメダメだ、このツバメ。もともと きが ながいとは いえそうもない おうじさまは、あっというまに キレました。
「いいから とっとと うごけ! だから『きかん』なんぞに まけるんだ!」
あはははははは!! それいったら ダメじゃんか!! さすがにツバメも だまっていられません。
「それを いうなら そっちだって! だいいち あっちのほうが かわいいし、ドジっこだし、おっぱいおおきいし!!」
「すべて まけてるな、おまえ」
「ぐう…………」
いいまかされて どうするんだ。とにかく ケンカは いけません。
「しかたがない、あしたは もうすこし マシな うごきをしろ」
「わざわざ いわれたくは ないのです!」
はいはい、とにかく あしたからは もうすこし はなしを すすめてくださいね。



そして よくじつ。
「きのうの おくれを とりもどせよ」
「いわれるまでも ないのです!!」
ストーリーを わかってるんだか。とりあえず やるきは あるような ふたりです。
「よし、それでは このけんの つかに あるほうせきを……」
「ざっくり とどけるのです!」
ツインテールを さっそうと ゆらし、ツバメは まずしいひとたちの いえいえを とびまわりました。やれば できるこなんです。
「フン、これくらいは やってもらわないとな」
まったくです、けなげに とんでいくツバメを みながら おうじさまも まんぞくそうです。
「さて、つぎは おうかんの ほうせきを くばるが いい」
「……………ちょっと やすんで いいですか?」
スタートから はりきりすぎです。ツバメは はやくも かたで いきを しています。
「まあいい、よていどおりだ」
あ、きていじこうですか?
「もともと こいつに きたいして などいない」
ひどいはなしだなあ。それでもツバメは ひとやすみすると、
「いってくるのです!」
がんばって とんでいきました。はなしは さくさく すすみますね。
「これも きていじこうだ」
ものがたりだから とうぜんだ。ツバメだけが くろうしながらも、じゅんちょうに おうじさまから ほうせきが なくなっていったのでした。




「…………あなたは なにを やってるんですか?」
「――――みぼうじん――――A―――――――?」
いや、AもBもないから。とりあえず ながいくろかみに つつまれた ぼんやりとした しょうじょは みぼうじんらしいですよ?
「そんなことより てつだってください!」
「――――こんかいは―――――わたしは―――――――モブよ――――――」
もしかして やりたくないのだろうか? 
「うぅ…………なんで みんな きょうりょくして くれないんですかぁ〜?」
そりゃツバメも なきたくなってきますね。しかしツバメは まけません!
「くようさんの イケズー!!」
なきながら とびさっていきました。まけてるじゃん、ツバメ。



「ほら、つぎだ」
「…………わたしって むくわれないこ なんですね…………」
そうね。ツバメは ひきょうりょくてきな めんめんに かなりおちこんでいます。というか、みんな すきかってだなあ。
「いいから はやくしろ、これいじょう はなしが ながびくのは ほんいではない」
ほんと ムカつくな、このおうじ。
「そんなこと いったって、もうほうせきは ないじゃないですか!」
ツバメは すっかり ほうせきが なくなって さびしくなった おうじさまに むかって どなりました。しかし おうじさまは れいの ひにくな えみを うかべ、
「フン、どこを みているんだ おまえは? まだ ぼくには わけるものが あるぞ」
どこまでも そんだいですねえ。ツバメも もうこのペースに なれたようです。
「どこに そんなものが あるんですか? あなたは なにも もってないじゃないですか?」
「まだ ぼくの からだに はってある きんぱくが あるだろう、これを はがせばいい」
そういえば、おうじさまの ぜんしんは きんぱくに おおわれています。どうやら これを はがせとの ことらしいですね。
「そ、そこまで やるんですか?」
「これも きていだ、いわれるまでもないだろう」
ツバメは そのことばに かんげきして、
「すばらしいです! たいどは そんだいで ことばは なまいきで みためは ムカつくけど いいひとなんですね!」
ひどい いいぐさだけど、とりあえず そんけいのめは してます。
「よーし! がんばりますよー! ……………………明日は」
それでも つかれてたのでしょう、ツバメは ことばどおり バッタリと たおれてしまいました。そういえば わたりどりだったな、こいつ。
「む、どうやら じかんは ないようだな。なにより はなしを つづけるのが むずかしい」
ほんとだよ、こんかい きょこたんの キャラづくりは これでいいのかねえ?
「でばんが あれば いいだろう、ああいうのは」
おまえもな。
「だから ぼくは ふほんいだ」
はいはい。とにかく ひづけを かえましょうかね。



ということで よくじつなのです。
「しぬきで はたらけ」
「おことわりします!」
あいかわらず ギスギスした かんけいです。なんでしょうかね、こいつらは。
「いいから はたらけ、どうせもう じかんがないんだ」
え? ここでネタばらし? 
「むー、わたしは ささきさんを のこして しぬわけには いかないのです!」
いや、ツバメだから。ふゆは こせないからね! 
「そういうことだ、さからっても しかたないなら せめて いいことでも しておけ」
「えー? どうにかならないんですか?!」
なって たまるか。ということなので おとなしく はたらきなさい。
「いやだなあ…………」
わかった、ささきには たちばなさんは がんばったと いっておくから!
「…………ぜったい なのですよ?!」
はいはい。しぶしぶながら ツバメも なっとくしました。もうさすがに ながびかせるわけには いかなくなってるんです。
といった うようきょくせつが ありましてですね? どうにかツバメは おうじさまから きんぱくを はがして ワーキングプアだったり、ネットカフェなんみんだったりに くばることに なりました。
「なぜ ここだけ リアルなんですか?」
せそうを きりたかったからです、というか おれが ワーキングプアだよ。
「それなら いんさつだいが どうとか いわなければ いいのです」
…………ツバメは かみなりに あたって しにました。
「コラーッ!! かってに はなしを ねつぞう するなーっ!!」
チッ! いいから しごとしろよ。
「やっぱり わたしって むくわれません………」
こころなしか ツインテールも ちからなく さがり、それでもツバメは けなげに とぶのでした。



「HOHOHO、ホームレス〜♪」
「…………アレは むし ですね」
けんめいな はんだんです。
「あれ〜? おれの でばん これだけかよ?!」
あるだけ マシだと おもいやがれ。



そんななかで もくもくと きんぱくを とどけるツバメです。
「うう………なにか きゅうに さむくなって きました………」
そうです、ふゆは もうすぐそこなのでした。がんばれ、ツバメ!!
「はい! ここが みせばですから!」
いまさらながら ツバメは やるきを だしています。なんども おうじさまから きんぱくを はがしては とんでいきました。



そして、ふゆが もうすぐそこに せまり、 おうじさまから きんぱくも なくなりました。



「………なんでですか?」
「なにがだ?」
「わたしは きんぱくを はがした だけですよね?」
「そうだ」
「それでなんで こうなるんですかーっ?!」
ツバメが さけぶのも むりは ありません、そこには おうじさまが なぜか ぜんらで たっていたんですから。
「なにも なくなったから こうなっただけだ」
いや、どうぞうが ぜんらは おかしいだろ。しかし おうじさまは とうぜんのような かおを しています。
「だーかーらー! そこで すっぽんぽんって!!」
「なにを いっている、ぼくは じしんあるぞ」
かみあわないなあ、おうじさまは いつのまにか ポーズまで かえてるし。
「もういやです! こんなとこ いられません!!」
さすがに ツバメも げんかいです。というか、さんざん くろうして あげくに ぜんらは ひどい。
そこで にげだそうと つばさを ひろげましたが、
「あ、あれ? とべない………」
まったく ちからが はいりません。
「それは そうだ、えっとうできないままに あれだけ とんでいたのだからな」
「なっ?! わかってたんですか?」
「それが きていじこうだ」
まあストーリーは そうですからね。でも ぜんらは ない。
「たしかに そうかもしれないけど! でも こんなんじゃなかったです!!」
「あきらめろ、おまえは いいことを したんだ。せめて やすらかに やすむといい」
「やすらげません!!」
たしかに これは やすらげない。というか ぜんらだし。
「いーやー! お××××の したで しぬなんて ぜったい いやーっ!!!」
「おい、じょせいが ××××など きがるに くちにするな。げひんな やつだな」
「おまえに いわれたくないのです!!」
「お、ゆきだな」
「うわーん!! わたし しんじゃうんですかー?!」
なんとも ひつうな ツバメの さけびが くらい よぞらに ひびきわたりました………



あさがきて、ひとびとが めをさましたとき、ぜんらで たつまきせんぷうきゃくの ポーズを とった おうじさまを みるはめに なったのです。
それはそれは いいえがおでした。
そして そのしたには いちわのツバメが しんでいました。
なきながら しんだのでしょう。それはそれは むねんそうでした。
きんぱくや ほうせきを もらったひとたちは ツバメを おうじさまの どうぞうの ましたに うめました。たしょう ていこうされた きがしたのは きのせいです。



こうして ひとびとは ぜんらの おうじさまのぞうを こうふくな すっぽんぽんの パンジー、りゃくして スッポンポンジーとよび、イマイチやりきれない きもちながらも たいせつにしましたとさ。
めでたしめでたし。










「…………ぜんぜん めでたくなんか ないのです!!」
ほんとだね。