『SS』 Dialogue:報告


7:40

「では朝の会議を始める。喜緑君、議題を」
「はい、まずは先日の美化活動についてですが…………」

8:20

「では一端解散とする。放課後は部活動について予算編成の足がかりとするデータ作成に入るので皆遅れることのないようにな」
「会長、議事録はどうしますか?」
「ああ、すまないが昼休みに纏めておいてくれると助かる」
「わかりました」
「喜緑君が優秀で助かるが、皆も出来るだけフォローを頼む」
「ではこれで終了ですね」

8:25

「ふう、朝も早くからめんどくせえな」
「お疲れ様です、でもタバコはダメですからね」
「わかってるよ、流石にそこまで馬鹿じゃねえぞ。それならいつものを頼むか、なあ江美里?」
「はいはい、わかってますよ」

チュッ!







12:30

「はい、会長あ〜ん」
「いや流石に恥ずかしいだろ?」
「何言ってるんですか、その為にわざわざ生徒会室で二人っきりになったんですから」
「お前、書類はどうした?」
「あのようなものは私にとっては瑣末な事です」
「ふん、ずるいもんだな」
「ええ、あなたと二人でいたいですから……」
「俺も江美里と二人きりでいたかったさ……」

…………チュッ!







16:40

「それでは定例会議を行う。最近文化系の部活動で実質活動していないものが多いのだが、生徒会としては幽霊部員の洗い出しを行いたいと………」

17:30

「会長、そろそろ………」
「む、そんな時間か。いいか、内容のない議論は無駄そのものだと以前から私は言っている。よって今日は解散するが各自課題は持ち帰って精査するように。以上だ」
「それでは会長、」
「ああ、すまんな喜緑君、いつも君だけ残ってもらってしまって」
「いえ、これも職務ですから。早めにまとめてしまいましょう」

17:38

「大丈夫ですよ、もう皆さん帰られたようです」
「あー、くそっ! 毎回こういうのも疲れるぜ」
「その割にはたのしそうですけど?」
「ふん、役目とは言え人の上に立つというのは気分がいいもんさ。まあお前には分からんだろうがな」
「そうですね、有機生命体の言うところの順位の優越感など私には無縁の話です。でも、」
「でも何だ?」
「そのおかげで会長とこうしていられるなら私としては満足ですね」
「…………まったくだ、その一点においては古泉の奴には感謝しとかねえとな」
「でもタバコはダメです」
「……………ケチ」
「替わりにこれで我慢してください」

チュッ!









18:50

「やれやれだな、お疲れ様だ。帰るぞ江美里」
「…………あなたが邪魔しなければもっと早かったんですけど?」
「禁煙させといたんだ、これくらいは許せ。それとも嫌いか?」
「………私が嫌いな殿方とこのような事をするとでも?」
「いいや、何より俺が許す訳ないだろう」
「ふふっ、我が儘ですね」
「そうさ、俺は我が儘なんだよ」
「ちょ、会長?!」
「もう仕事は終わったんだろうが。早く帰るぞ」
「それで抱きしめられたら帰れませんよ」
「いいんだよ、帰る前にもう一回だ」
「…………仕方ありませんね………」

チュッ!









19:10

「……ただいま帰りました」
「おう、とりあえず飯にするか」
「はい、すぐご用意しますね。ところで…」
「何だよ?」
「いつになったら帰り道に手を繋いでくれるんですか?」
「それについてはすまないとは思う。だがこれも礼儀正しい生徒会長役を全うする為だとよ。だから帰り道も別々にしてる訳だからな」
「わかっています、ただ私も…………」
「ああ、たまには我が儘も言っていいだろう、変に抱え込まれてもこっちが困る。その分一緒にいてやるからな」
「ありがとうございます会長…………」








20:35

ごちそうさん、相変わらず旨いぞ」
「おそまつさまでした、そう言っていただけて何よりです」
「さて、」
「食後の一服もやめていただきたいのですけど?」
「これくらいは許してもらわないとな」
「まったく………………お風呂沸かしてきます」
「おう」








21:55

「いいお湯でしたね」
「ああ、しかしいいのか? わざわざ風呂場を情報操作なんかして」
「そうじゃないと二人で入れないじゃないですか」
「…………あっさりと凄い事言いやがるぜ………」
「私と一緒の入浴はお嫌いですか?」
「いいや、むしろ望むところだな」
「うふ、ありがとうございます。それでは後は宿題だけ片付けてしまいましょう」
「はあ、優等生面も楽じゃねえな」
「私がお手伝い致します。それに機関の援助があるとはいえ大学受験は受けられるんでしょう?」
「はいはい、江美里さまの言うとおりですよ」
「大丈夫です、会長は元々頭がよろしいですから」
「そんな事は分かってる、単に面倒なだけだ」
「まあ、それなら早く終わらせてしまいましょう」
「ゲッ……………」






22:40

「それではおやすみなさい」
「という訳にはいかないよな?」
「あっ! 会長………?」
「まだ夜は長いんだからな」
「でも明日もまた朝の予定が………」
「舐めるなよ、そのくらい余裕でこなせるぜ。それより江美里………」
「もう…………仕方ないですね……………」
「嫌なのか?」
「……………そんな訳ないじゃないですか……………いじわる……………」
「愛してるぞ、絵美里………」
「私もです、会長……………」

……………アアッ!!













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「……………喜緑江美里…………」
「何でしょうか、長門さん?」
「この情報を情報統合思念体に報告する事は推奨しない」
「何故ですか? 観測対象と接触がない時の私の日常を報告しようとしているだけなのですが」
「………………このバカップルが……………」
「ふふふ、羨ましいですか?」
「!!!!!」