『SS』かさくよう

むかーし、むかしの ことじゃった。
あるところに おじいさんと おばあさんが すんでおったそうな。
「うむ、こんかいは じじいか。それはまあ ひゃっぽゆずって ゆるさなくは ない。だがな? こんかいの はいやくは なんなんだ?」
いつものように ぐちから はじめる おじいさんトークじゃった。だが こんかいは あいてが わるい。
「クックック、ぼく としては でばんが あるだけでも ぎょうこうな ことさ。しかも きみと ふうふ とは ひじょうに きょうみぶかい」
のどの おくで ふくみわらいを するような おばあさん なのだから。はつとうじょうで ひらがなトークは こっちが かいてて しんどい ですけど なにか?
「おまえは それで いいのか? ささき」
「おいおい、みょうじで よんだら みも ふたも ないだろう? キョン
おまえら、そろって みも ふたも ねーよ! とにかく なかのよい ふうふ だったの! わかった? 
「りょうかい。ぼくも きにいるか わからないが せいしんせいい どりょくを おしまないように しよう」
「やれやれ、このばに いるじてんで もうきまり なんだろ?」
だきょうが あってこその じんせいです。とにかく ふたりは なかよく くらして いました。
もんだいは ふたりには おかねが なかった ということです。
「まあ こうこうせい ふたりが くらす ぶんには ぜいたくは いえないさ」
あっさりと おばあさんは せっていを むし しやがりました。
「しかしだな、さすがに ねんまつが ちかいから そうは いえない かもな」
おじいさんが きどうしゅうせいを してくれました。さすがに なれたものです。
「ふむ、いちり あるね。だが ぼくらに しゅうにゅうを える しゅだんが あるとは おもえない のだが」
かたを すくめて おばあさんは いいました。なんというか、あきらめが はやくね?
「まあ しょうじき じしんは ないが、とりあえず ここに かさが あるんだが」
おじいさんは かさを とりだしました。いつ つくってたのかは さっぱり わかりませんが。
「それで そいつを うるという ことかい? それならば、ぼくが いこう」
あれ? おばあさんが やるきですよ?
「いや、いちおう これは おれの しごとじゃ ないか?」
「そうはいうがね、キョン。こういう しょうばいならば じょせいのほうが どうじょうもあって せいこうの かくりつが あがるのだよ」
おじいさんよりも おばあさんの いうことのほうが はるかに せっとくりょくが ありました。
「そうか、なら いっしょに いくか?」
「ああ、きみと いっしょなら こころづよいな」
「おだてるなよ」
「きわめて じじつさ。クックックッ」
こうして、おじいさんと おばあさんは なかよく まちへと でかけました。さて、すでに しりにしかれてる というか、なかいいな おまえら。




まちに おりた ふたりですが、ここで はなしが かわっていきます。なぜならば、
「まあ おまえなら らくしょう だっただろうな」
「いや、なかなか くろうしたよ。やはり じゅようが ないものだね」
でも かさを かんばいさせた おばあさんは どこか まんぞくそうです。だが これでは はなしが すすまない ではないか?!
「だから うりあげから かさを かおう」
「ほんまつてんとうも はなはだしいな」
まったくもって そのとおりだ。けっきょく かいものまで おわった おじいさんと おばあさんは やすく かさを かいました。
「なあ、おれたちって けっこう ぼったくりだったか?」
「このかさは たいりょうせいさんの きかいで つくられたものさ。ハンドメイドの ぼくらなら あのくらいは とうぜんだよ」
だれの てづくりだったのかは なぞなんだが。
「ぼくさ」
そうか、キョンなにも してないのな。
「うーむ、したいとこだが」
「きみに ふたんは かけられないよ」
すげえ、ささきは かんぺきな おくさまだったのです。うらやましいな、キョン
「おれとしても こころぐるしくは あるがな」
「クックック、ぼくが すきで していることだ。きみは そんなこと おもうひつようは ないさ」
どこまでも できた おばあさんでした。つくづくキョンは めぐまれてるなあ。
「さあ、かえろう。これで すこしは かっこうも つくだろうしね」
「おう、せめて にもつくらいは もたせてくれ」
「では、おねがいしようかな」
……………なんか いいふうふの はなしにしか ならないなあ。
「ひいきしてもらって なによりだね」
はい、ささきさんは ひいきしてますね。
「おいおい、しらねえぞ? あとでどうなっても」
だいじょうぶ、このはなし とうじょうじんぶつ すくないから。
「まあいいさ、そんじゃ かえるか」
たくさんの にもつを かかえた おじいさんと よりそう おばあさんは なかよく うちに かえりました。あれー? これで よかったっけ?




こじんてきには いいんですけど それじゃ なんのはなしだか わかりゃしないので とりあえず すすめてみましょう。
「…………なあ、ささき?」
「なんだい?」
「こんなもん、いきがけに あったか?」
「ふむ、そういえば きづかなかったね」
そう、いつからそこにいたのか わからない。
だがまるで、ずっとそこにいたかのようだ。
ながいくろかみに つつまれた はくせきのかお。
くろく おおきな ひとみが おれたちを みつめている。
ぜんしんを まったく いろを かんじられない くろい せいふくに みをかため。
そうだ、すおうくようは いつでも おれのそばに…………
「って さくひんが ちがうだろ?!」
「どういうことだい?」
「いや、なんでもない………」
あ、ささきさんは しらなかったっけ? とりあえず くようは とうじょうシーンは こういうかたちです。
「――――――――――」
「…………………………」
そして いつもの ちんもくが、
「やあ、くようさん。こんかいは またずいぶんと かずが ふえたねえ」
なかったです。さすがは ささきさんなのです!
「――――――――――」
「――――――――――」
「―――――わたしは―――――さんにんめだから――――――」
「――――――――――」
「――――――――――」
「――――――――――」
だれが こネタを はさめと いうたか。しかし、いっきに ろくにんもの すおうくようがいる こうけいは そうかんです。
「すなおに ぶきみだろ、これ」
おじいさんの かんそうには ちょっとだけ どういしたい。
とにもかくにも そこには ろくたいの おじぞうさまが いたわけです。
「おくようさま――――と―――――および―――――」
「ぜんりょくで ことわる」
「おやおや、ずいぶんと なかがいいことだねえ」
すごくなごむ くうかんに なってないだろうか? おじいさんは にがにがしいようですが、おばあさんは わらってるし、まあ かずは おおいけど おじぞうさまは いつものとおりです。
「とりあえず こんかいは おまえに かさを かぶせるだけだぞ?」
おじいさんは そういって かさをとりだし、おじぞうさまに かぶせていきました。
すると、
「―――――ひも」
「ひも?」
「――――とめて――――」
たしかに あごひもが ありますねえ。
「わかったよ、ぼくが とめてあげよう」
おばあさんが おじぞうさまの かさのひもを むすんであげました。
「―――――――かんしゃ――――――する?」
「そこは ぎもんけいじゃないだろ。すまんな、ささき」
「かまわないよ、もともと くようさんは ぼくにとっても ゆうじんだからね」
えーと、あなたは てんしですか? こんかい、ささきさんは おいしすぎる…
「―――――あなたたちは――――――あたたかいわ――――――」
「そうか?」
「ありがとう、くようさん」
すごくいい ふんいきになっちゃった。ほのぼのとした くうきなんですが、
「そういや、あと いったい じぞうは あるはずだな?」
おじいさんは ちゃんと きづきましたよ、そうです、おじぞうさまは あと いったい あるのです。
「んでもって かさは たりないから てぬぐいを……………」
そうそう、かさが ないから てぬぐいを ですね?
「……………なにやってんだ?」
「……………ゲストしゅつえん」
それは おじぞうさまなんですけど、みためは ショートカットですし せいふくも ちがいますね。というか、
「なんでいるんだ、ながと?」
「てんがいりょういきに あなたの てぬぐいは わたさない」
そうかー、というか なに そのりゆう。
「このしゅつえんを かけて、すずみやハルヒと みっかみばん ろんぎを かさねた」
むだなことを してるなあ。
「くようは それでいいのか?」
「てんがいりょういきとは りしりさん さいこうきゅうコンブにて すでに ばいしゅうずみ」
やすいのか たかいのか わかんないなあ。というか、ばいしゅうって。
「―――――――――うまい――――アルヨ?」
「おまえが くってるのは すコンブじゃねえか! というか、キャラちがうし!!」
「―――――――かぶきちょうの―――――――――じょおうと――――――――よばれてるアル」
「おまえ まだ せいゆう きまってないんだからな?! うかつに いって もしそうなったら どう せきにん とるんだよ?!」
「――――ヒロインは――――――もらった――――――アル―――――」
いや、それだけは ないから!! だれだ、こいつに いらんちしきばっか おしえてるやつ?!
「いつも きみのまえでは こうなのかい?」
「…………おおむね そうだな………」
「くろう してるねえ」
「ああ、どうにかしてくれ…………」
おじいさんは すっかり くたびれましたが、
「……………はやく てぬぐいを」
という おじぞうさんに てぬぐいを まいてあげました。おじぞうさまは むひょうじょうですが うれしそうでした。
「クックック、ライバルのはずなんだけど ほほえましくも あるね」
それを みていた おばあさんは しずかに わらいました。
「だが こんかいは ぼくが キョンと ふうふだ、そこだけは くぎを ささせて もらおうか」
「お、おう…」
「……………りょうかい」
ここいちばんの はくりょくは さすがでした、さすがに おじぞうさまも そこまで ストーリーをかえようとは してないようです。
「さて、そろそろ かえろう。もう ひが くれてしまうよ」
「そうだな、さいごに いいことも したしな」
ふたりは いえへと かえっていきました。
「―――――――それでは―――」
「……………………また…………」
おじぞうさまの こえは ふたりに きこえていたか どうか……………




「やれやれ、どうにか としも こせそうだ。わるかったな、ささき。けっきょく せわに なりっぱなしで」
「なに、ぼくは たいしたことは していないよ。それより、ことしいちねん おつかれさま」
かさを うってしまったので なんとか ささやかにでも としを こせる よういが できてしまった ふうふは、のんびりとした じかんを すごしていました。
「おう、いよいよ らいねんは じゅけんかと おもえば のんびりしていて どうなのかとも おもうがな」
「クックック、そのわりには ききかんが かんじられないけどね」
「ほっとけ」
いちおう あんたら ろうふうふ なんだけど? なんで あたりまえに じゅけんの はなしとか しちゃうかなあ?
「まあ まんがいち きみが じゅくに かよわなくては ならなければ つきあわせて もらうけどね」
「そうならねえように きをつけるよ」
いやだから、あんたら いっしょに くらしてるんですよ? 
とにかくは ふたりは なかよく としこしを むかえようと しているわけですが、それなら それでいいような。
「――――――ズシーン―――――――」
「――――――ズシーン―――――――」
「――――――ズシーン―――――――」
「――――――ズシーン―――――――」
「――――――ズシーン―――――――」
「――――――ここまでコピーだったから――――――」
「………………ズシーン…………………」
そうは とんやが おろさないのか、いえのそとで ぎおんを わざわざ くちに だしている れんちゅうが いました。
「やあ、どうやら おきゃくさまの ようだよ」
「なんで わざわざ こえに だしてんだ? あいつら」
おじいさんが いえの そとを のぞいてみれば、
「―――――――ぐーてん――――だーく?」
「すまん、よくわからん」
とりあえず おじぞうさまが ぞろぞろ いました。よくみれば、それぞれ おおきなにもつを もっています。
「なあ? なんでそれなのに あしあととか ないんだ?」
「―――――われわれは――――」
「――――――さんミリほど――」
「――くうちゅうに――――――」
「ういて―――――――――――」
「―――――――いる?――――」
「しるか!」
「…………ちなみに ぼうネコがたロボットと おなじりろん」
「ほう、それは くつが へらなくて いいねえ」
「いや、そういうもんだいでも ないと おもうぞ?」
ふしぎを ふしぎと まったく おもっていない おじいさんと おばあさんは おじぞうさまの とつぜんの らいほうにも おどろくそぶりも ありません。
なんか ふつうに おじぞうさまたちを むかえてしまいました。
「だが わざわざ きてもらって わるいんだが、おれたちは まあふつうに としは こせると おもうぞ?」
そうです、だいたい おんがえしに ならないじゃないですか! しかし、おじぞうさまは、
「――――――これは――――われわれの―――――ぶん」
「――――じまえで――――もって――――きたわ――――」
「―――――あとは――――ばしょと―――――」
「―――りょうりを――――――――――」
「おねがい――――――――――――」
「―――――――します?」
「いや、するなよ。つーか、こんだけ ぜんぶ じぶんたちの ぶんかよ?!」
たいりょうの こめだわらや たべものを みた おじいさんは おもわずツッコみましたが、
「…………………」
かたわらに たたずむ むくちな ショートカットをみて ああ、こいつがいるなら さもありなん と思いました。
「だ、そうだが、どうする ささき?」
「クックック、あいにくと きみの かおを みていたら、くるものは こばまない ようだけど?」
そういう おばあさんも たのしそうです。
「さて、でも にもつは はこんでもらえるかな? あいにくと ぼくらじゃ はこべそうには ないんでね」
「―――――りょうかい――――――」
おじぞうさまたちは にもつを かるがると かかえ、ぞろぞろと いえへと はいりこみました。
「やれやれ、おんがえしじゃなくて おしかけだな、こりゃ」
「まあいいじゃないか、たまには にぎやかに しんねんを むかえるのも いっきょうと いうものさ」
「おまえが いいならな」
「きみこそ、ね」
おじいさんと おばあさんは たがいに わらいあいました。
おじぞうさまは それをみていましたが、むひょうじょうな そのかおに すこしだけ ほほえみが あったように みえたのは きっときのせいじゃ ないでしょう。
こうして おじいさんと おばあさんと おじぞうさまたちは たのしく としを こし、そのまんま ちかくに いついた おじぞうさまたちは ずっと このいえの まもりがみとして おもしろおかしく すごしましたとさ。

おお、ほんとうに めでたしめでたしになっちゃった。
















「……………ゆきは まだいいじゃない、あたしの でばん まったくなしなんて! なんなのよ、どこが おもしろいのよ このはなしー!!」
「す、すずみやさん、おちついて………」
「あ、けいたいが………」
「えー? なんで ささきさんが いるのに あたしのでばんが ないんですかー?!」
「ふん、ちゃばんだな………ぼくは かえるぞ」
このひとたちの でばんが あるかは このあと しだいですねえ………