『SS』声:Dialogue

「…………と言う訳だよ、それが僕の考える所なのだがキョン、君の意見を是非拝聴しておきたいね」
「あー、それで俺に何が言えるというんだ? お前の解説は多分非常に分かりやすいものだったに違いない。ただし俺がもう少々哲学書でも読めば、の話だが」
「そうかい? これでも僕はかなり専門用語は省いたつもりなんだが。君も興味深げに聞いてたじゃないか」
「そりゃお前がよくそれだけ物事を知ってるもんだと感心しただけだ。言葉の意味はよく分からんが、ってやつだよ」
「クックック、そうか、その点では君の関心を誘えてなによりだよ。だがよく意味が分からないと言われると僕の伝達手段にも反省せねばなるまい」
「んー? 要は塾での態度の問題だろ? 少なくとも学校より真面目に授業は聞いてるから心配すんな」
「……………君は本当に僕の話している本質だけを見事に掴むものだ、その点でやはり聞き役としての君の能力は計り知れないよ」
「いや、佐々木の薀蓄も凄いもんさ。それだけの知識がよく入ってるもんだな」
「僕の場合は知識や言葉で自分自身を無理に形作っているだけさ、君のようなタイプの人種には要点が分かりにくいと不評かもしれないけどね」
「まあ本音でしゃべれないってのは誰でもあるもんさ、俺だって別に言葉を選んでない訳じゃないぞ?」
「そうかな、君は適度に分かりやすいと思うけど」
「む、そうか?」
「そうさ、だからこそ君には話しやすい。僕のような人間の言葉の一つ一つを無意識に把握し、要点を掴むのだから」
「そんな偉そうな能力があったらなんで俺の現国の成績は横ばいのままなんだよ…………」
「それは君が必要なものしか必要としていないからだよ、クックック」
「お前なあ、受験生なのに授業内容が必要ないなんて言えるかよ?」
「だが現実としてキョンにとって授業とはそこまで重要なものかい?」
「ぐっ…………」
「大方君の事だ、これは高校受験の為にしょうがなくやってることで高校には入れればいいと思ってるだろ?」
「…………まあ正直そうだが、そんなに俺は分かりやすいか?」
「おや、気分を害してしまったかい? それはすまない、別に君を貶めるつもりはなかったんだ」
「いいってこった、そんなことで一々ムカついていられるか。そんなヤツと一緒にいれるか、佐々木は?」
「すまない、どうも君には気軽に自分の気持ちを吐露してしまうよ」
「それでいいんじゃねえか? というか気軽には聞こえにくいんだが」
「クックック、これでも僕はかなり君には打ち解けた話しかしていないんだよ」
「そうかよ、そう言ってもらえて光栄だね、って感じか?」
「おや、君にそう言われてしまうとはね」
「まあいいさ、こうやって塾の行き帰りにお前と話すのも当たり前になってるしな」
「そうだね、君がそれに付き合ってくれて感謝してるよ」
「ああ、いい時間つぶしになるよ」
「それも随分だな、僕の話は君にとって単に時間を消費する為の手段に過ぎないのかい?」
「ん? あー、そういうんじゃなくってだな?」
「なんだい? 僕も君の話くらいで一々苛立ちを感じるほど心の狭い人間じゃないつもりだけど?」
「だからそんなに怒るなって。俺はお前と話すこういう時間は嫌いじゃないぜ?」
「だから僕は怒って………」
「それにだな? まあ確かにお前の話は一々比喩があって分かりにくいかもしれん、だが俺はそういうのもいいと思ってる」
「え、それは…………」
「まあ高校に上ってお前みたいな解説好きに遭わないとも限らんしな。ただそいつが男ならイラッとするだろうが」
「……………まあ、そうかも………」
「ただ俺はお前の声が気に入ってるからな」
「え? あ、キョン?!」
「長い話でもお前の声だから聞けるんだ、高くてキンキンしてないし、落ち着くからな」
「………………」
「だから気にしなくて好きなだけ話してくれて構わないって佐々木?!」
「………だから君は………」
「なんだ? どうした、これでも思い切って褒めたつもりだったんだぜ?」
「いや、だからこそ君は油断できないよ。どうしてこうも僕の中の僕自身に簡単に触れてこられるのか………」
「何言ってんだ佐々木?」
「なんでもない、そう言ってもらえて光栄、ってことだよ」
「ああ、俺なんかでよかったらな」
「………………君じゃないとダメなんだけどな………」
「なんだ?」
「なんでもないよ」
「ふーん………お、着いた着いたっと」
「あ…………」
「どうした?」
「いや…………早く行かないと聞きやすい席が確保できなくなるよ、キョン
「あー、とりあえず黒板が見えりゃいいさ。後は頼むぜ、佐々木」
「まったく、君ってヤツは……………」
























「……………ずっとこのままでいてもいいのに……………」
「ん? なんだ佐々木?」
「なんでもないよ、キョン