『SS』ごちゃまぜ恋愛症候群 5

5−α

珍しく妹に起こされる事も無く目覚めてしまった。というか寝れなかったとも言えるな。
あの後長門に連絡するべきか散々悩んだのだが、実害が感じられ無い上にキョン子も朝になれば世界も戻るかもしれないと言っていたので、とりあえず様子を見ようと思ったのだ。
まあそう言いながら寝れないほど気にしてたのが凡人としての俺の限界というものなのだろう。そう思いながら、まずは携帯を開けてみる。
「………………まあそうなんだろうがよ」
きちんとメモリに『キョン子』という間抜けな名前を見つけた時には俺はため息をもうついていた。
まあ学校を終わってからでもかけてみるかと思いながら制服に着替える。こんな気分でも登校しようとしている俺は学生の鑑として表彰状の一枚ももらったって誰にも文句は言われんだろう。
着替えて部屋を出た瞬間に妹に、
「あー、キョンくんが起きてるー」
などと言われてしまったのだが失礼な話だ。俺がお前の力がないと起きれないような駄目アニキだとでも思っているのか?
そんなお兄様の心など知ることもない妹と共に朝食の席を囲みながら、俺は長門にこの話をするべきなのかまだ迷い続けていた。





5−β

珍しく弟に起こされることも無く目覚めてしまった。というか寝れなかったとも言うわね。
あの後長門に連絡すべきか散々悩んだんだけど、実害が感じられない上にキョンも朝になれば番号も消えてるだろうと言っていたので、とりあえず様子を見ようと思ったのだ。
まあそう言いながら寝れないほど気にしてたのが凡人としてのあたしの限界というものなのだろう。そう思いながら、まずは携帯を開けてみる。
「………………まあそんなもんよね」
きちんとメモリに『キョン』という間抜けな名前を見つけた時にはあたしはもうため息をついていた。
まあ学校が終わってからでもかけてみるかと思いながら制服に着替える。こんな気分でも登校しようってんだからあたしは学生の鑑として表彰状の一枚ももらったって損はないはずなんだけど。
着替えて部屋を出た瞬間に弟に、
「あー、キョン子ちゃんが起きてるー」
と言われたのは失礼だと思わない? あたしはお前がいないと起きられないような駄目アネキだとでも思ってんのかしら?
そんなお姉さまの心など知る由も無い弟と共に朝食の席を囲みながら、あたしは長門にこの話をするべきなのかまだ迷い続けていた。




5−α2

そう言いながら早くも週末を迎えようとしている。ああ、俺はどこまでもチキンだったのさ。
何故ならばこの一週間、俺もSOS団も、何一つ変化がなく過ごせてしまったからだった。長門からのアプローチもなく、朝比奈さんの手紙もなく、古泉の笑いの成分も変わることなく、ハルヒの機嫌を損ねるようなこともなかったんだ。
あいつから連絡があるものかと初めのうちは思っていたのだが、そこは俺なんだろう、何も無ければ連絡はしないもんなんだな。それは俺がそういう人間なんだから気持ちは分かる。
そういう訳で携帯に謎のメモリが残ったままで俺の日常は平穏無事に過ぎていき、俺はメモリの中の間抜けなあだ名の奴のことすら記憶の片隅へと追いやろうとしていたのである。
しかしだな、あれだけのことがそのまんま終わる訳はなかったんだよ。そう、それは出番を待っていただけなのかもしれなかったんだ。
週末の土曜日、俺は自転車を漕ぎながらいつもの駅前へと向かう。そう、恒例の不思議探索という名の俺の財布軽量化作戦の為だ。
何ゆえに損をするために俺は休日に労働しなくてはならないのか、答えは全て神のみぞ知るんだろうさ。
だがなあ、神様とやら? これは無いんじゃないか?!
時間にはまだ5分ほどあったとは思うのだが、それでも駆け足で駅前の広場に着こうとする俺の真横に同じ様に駆けていく女性がいる。
風になびくポニーテール。
驚きを隠せない横顔がそこにいた。多分俺も同じ顔でな。






5−β2

そう言いながら早くも週末を迎えてしまった。ああ、あたしはどこまでもヘタレなのよ。
何故ならばこの一週間、あたしもSOS団も、何一つ変化がなく過ごせてしまったからだった。長門がなにか言う事も、朝比奈さんから手紙をもらうことも、古泉が笑わなくなることもなく、もちろんハルヒコの機嫌は良いままだった。
キョンから連絡でもありそうなものだが、そこはあたしなんだろう、何も無ければ連絡などはしないようだ。それはあたしという人間もそうなんだから気持ちは分かる。
そういう事で携帯に謎のメモリが残ったままであたしの日常は平穏無事に過ぎてゆき、あたしはメモリの中の間抜けなあだ名の事なんか記憶の遥か彼方へと飛ばしかけていたのである。
でもねえ、あれだけのことがそのまんま終わる訳がなかったのよ。そう、それは出番を待っていただけなのかもしれなかったのね。
週末の土曜日、あたしは自転車のペダルを踏みしめながらいつもの駅前へと向かう。そう、恒例の不思議探索ってやつ。
何ゆえに疲れる為だけにあたしは休日労働に勤しまなければならないのか、答えは全て神のみぞ知るんでしょうね。
でもねえ、神様とやら? これは無いんじゃないの?!
時間にはまだ5分ほどあったとは思うんだけど、それでも駆け足で駅前にある広場へと着こうとするあたしの真横を同じ様に駆けていく男性がいる。
少し寝癖のある髪が風になびいて。
驚く横顔がそこにはいた。多分あたしも同じ顔してる。





「遅い! 罰金!!」
「遅えぞ! 罰ゲームな!!」
団長の声が重なって聞こえる。
そこにはなんと総勢8人もの男女がいたのである。
俺とキョン子はは立ち止まると顔を見合わせた。
「やれやれ……………」
その声は見事なまでにハモったのである。団長の機嫌を損ねる前に、と二人は並んで歩き出した。
こうしてSOS団勢揃いとなったのだ、俺は知らんぞ。
こうしてSOS団勢揃いとなったのよ、あたし知らないから。