『SS』ちいさながと 8

さて、コンビニの中など描写しても仕方が無い。あえて言うならここは青い看板で全国展開している店だ。
普段の俺なら雑誌のコーナーへ一直線なのだが、今日はお姫様の腹具合を優先するとしようか。
俺達は弁当が並べられた棚の前にいた。
さすがに周囲の目を気にしながら肩の上の長門に聞く。
「で、何を食うんだ?」
「あれ。」
即決かよ。長門の小さな指が指していたのは予想通りというかカレーだった。
予算も手頃だし俺に文句はない。
カレーを手にとってレジに向かう。
と、
「待って。」
どうした?
「足りない。」
そうか、まあいつものお前だとこれじゃ足りないのかもしれんな。
「違う、足りないのはあなたの分。」
いや、俺はもう飯は食ってるから大丈夫だぞ。
「一人では不公平。」
そういうモンでもないだろうとは思うのだが、まあ長門がそこまで言うなら俺もご相伴に預かるとしますか。
そうは言っても俺の金なんだがな。
俺はミックスサンドを手にした。正直このぐらいが予算的には限界だ、コーラを買ったらちょうど予算の限度一杯だぞ。
「これでいいか?」
お、2ミリは動いたな。これはかなり喜んでくれてるのか?
「では。」
おい!お前が持つな!!カレーが空中に浮いてる様にしか見えんだろうが!!
「私の為にあなたが買ってくれたもの。」
ああ、だから俺が持ってやるから、とりあえず、こっちに渡してくれ。
「……………………そう。」
渋々ながら長門はカレーを渡してくれた。
やれやれ、誰にも見られてないだろうな?
思わず周囲を見回してしまったが、これじゃ俺の方が不審者みたいだな。
……………とにかく会計を終えた俺達は店を出た。