『SS?』 ゴキくよう〜登場編〜

 
 ゴキくよう 〜登場編〜

 草木も眠る丑三つ時。蒸し暑さにやられたかのように目が覚める。
 一人暮らしのアパートは築年数に相応しく冷暖房は完備などされていない。俺は渇いた喉を潤すべく1DKというには哀しいほどに狭い寝室から、これも狭いキッチンへ向かう。
 中古でエコとは無縁の冷蔵庫が五月蝿い中、ドアを開けて作り置きの冷えた麦茶をペットボトルから直飲みする。すると、カサッという物音。まさか、いやしかし。ここの古さから言っても出て来ないはずはないとは思うが、それでもスプレーも撒いたし、虫コナーズも置いていたのに。間違いない、キッチンの奥から音がする。
 俺は勧誘で貰いながらも結局契約しなかった新聞を丸めて右手に持った。くそっ、このクソ暑いのに何でこんな目に遭うんだよ。そう思いながらゴミ箱に手をかけた。この奥にヤツはいるに違いない。
 ……一瞬の勝負だ、ヤツはすぐに逃げやがるからな。ゴミ箱をずらしてから一気に行く!
 俺はゴミ箱を動かした! その視線の先には。
 最初、何があるのか解らなかった。
 黒いインクを水で満たしたグラスに垂らしたような、ぼんやりと滲む靄のようなもの………………それがファーストインプレッションで、自分の網膜に映っているものがよく見かける虫だと脳が認めるのに数秒もかかった。
「―――――パクリには――――限界が――あるわよ?」
 まったくだ、コピペって訳にいかないので一々読みながら打つのが面倒すぎる。
「って、ゴキブリにツッコミ入れられた?!」
 と、驚愕していたら、既にヤツの姿は無かった。虚しく振り上げていた新聞紙を降す。
「どうすりゃいいんだ…………」
 何よりも今まで書いていた九曜SSと同じノリで書いてもいいのかすらも判らない。これを小説とするべきなのか悩みつつ、俺は流し台の隙間に逃げ込んだゴキブリであろう虫的な何かを見つめたのであった。
「っていうか、九曜って言っちゃったしなあ」
 続きがあるのかどうかは、まったく解からないのであった。